別れた理由。(GL)※NL要素含む

最初は甘く清らかな愛だった。

彼は傷だらけの私を包み込んで癒し、私もまた。傷ついた彼を包み込んで癒した。

この愛は永遠に二人で育んでいくもの、私はそう思っていた。

けれども。


「邪魔なんだってさ」


彼がいなくなった部屋で、私は親友に打ち明けた。


「…そうなんだ」


彼女は彼の定位置だった場所に座って私の言葉にゆっくりと言葉を返す。


「なんか社長さんの娘さんといい感じになれたんだって…だから私と別れてほしいって」

「うん」

「私別に引き留めたりしてないんだよ…?だったらしょうがないよねって、お仕事のためだもんねって…言ったら…「お前なんか遊びにきまってるだろ」って…「俺が悪いみたいに言うな」って…」


ボロボロと涙が零れる。


「私が悪いのかな」


そう呟いたとき、視界の隅にいたはずの親友がスッと消える。ほどなくして、私はあたたかなぬくもりに包まれた。


「あんたは悪くない」


降りかかる言葉は優しくて。傷口に痛いくらいにしみ込む。


「傷が癒えるまで…私がそばにいるから」

「…ありがとう」


心とちぐはぐな言葉を吐く。


最初は甘く清らかな愛だった。

彼は傷だらけの私を包み込んで癒してくれたのだと思っていた。

けれど気が付いた。本当に私を癒していたのは彼じゃなく…彼女だということに。

だから私は彼と別れた。そして彼女に癒してもらえるように嘘までついた。

罪悪感に優しさが痛いくらいにしみ込む。これはきっと我儘で自分勝手な私への罰。彼女を手に入れるための代償。


痛みと共に涙が零れる。その味はただ生ぬるいだけだった。



(暗転)

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