えび天。(NL)

「えび天ってなんでえび天っていうか知ってますか?」

「え?」


休日の昼下がり、突然電話が鳴ったと思ったら開口一番こんなことを言われた。しかも相手はクラスのマドンナの美香子さん。僕の頭は混乱の渦に落とされる。


「えっと…えび天ぷらだからじゃないんですか?」


そもそもなんで美香子さんがぼくのケータイの電話番号を知っているんだろう。生憎だが僕の友達にはマドンナと知り合いでなおかつ連絡先を知っているような奴はいない。ってかなんでえび天なんだ?


「そうですか…私はえびが天国へ召されたからえび天っていうのかと」

「うーん…分からなくはないけど」

「ありがとう、また連絡しますね」

「あっちょっと」


色々聞く前に呆気なく電話は切れてしまった。それにしても彼女に何があったんだろう。今どきそれくらいのことは検索すれば出てくるだろうに…。


「まぁ…いっか」


ケータイの履歴には美香子さんの電話番号が残っている。中学生の僕にとってはそれだけで十分な気がした。



(暗転)

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