寂しいは。(NL)
人が一人になるのは簡単だ。
例えばその人に対して嘘をついたり、暴言を吐いたり、あからさまに人を避けたりすれば。たいていの人間は人を嫌う…まではいかなくても、その人から遠ざかるようになる。
はずなのだが。
「なんでお前は俺に引っ付いたまんまなんだよ!」
「ほえ?」
一人になりたくて逃げ込んだ昼休みの図書室。最初は纏わりついてきたじょしどもやおこぼれをもらおうとすり寄ってきた男子どもも、冷たくあしらったらだんだんと俺の周りから消えていった。それなのに、この後輩は俺から一切離れようとしない。しかも距離が日に日に酷くなってきている気がする。
「とりあえず離れっ…ろ!」
「うっわ!」
「なんでべたべたくっついてくるんだよ!いい加減俺を嫌えよ!」
静かにしなきゃいけない空間なのに叫んでしまった。でもそれもしょうがないだろう。俺は一人になりたいんだ。
一人に…
ーお前のせいで…お前のせいで!
「うっ…」
過去の記憶がフラッシュバックする。そう、俺は誰かと一緒にいたら駄目なんだ。俺と一緒にいたら…
「やっぱり」
「…え?」
急に目の前が真っ暗になった。体から伝わるぬくもりで後輩に抱き着かれたと悟る。
「本当は誰かと一緒にいたいんですよね」
全てを見透かしているような優しい声。いつもくっついてくる後輩とは思えない声に自然と涙が零れそうになる。そうか、俺は孤独になりたかったわけじゃない。
「そう…かもしれないな」
涙を隠すように、おずおずとその小さな背中に手を回した。
(暗転)
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