やさしい君とお酒。(BL)
お酒が好きだってことは知っていた。
人と話すのも好きだって知っていた。
優しい奴だってことも知っていた。
だから歓迎会に行くことを止めなかったんだ。
「お前どんだけ飲んだんだよ…」
「んー…わかんらいっ!」
べろんべろんに酔っ払った悠太をベッドに放り投げてから土下座せんばかりの勢いで謝る新入生を思い出して舌打ちする。勿論その新入生にではなく、そいつに酒を無理やり飲ませようとした先輩に対してだ。未成年に酒進めるなよクソが。
新入生曰く自分が沢山飲ませてしまったということらしいが、どうせこいつの事だ。飲めなくて困っていた新入生の分まで自分が請け負ったんだろう。
飲むのは構わないが、自分がそんなに強くないことを忘れないで欲しい。
「あぇなんれまーさんいんのぉ?」
「お前が酔いつぶれたからわざわざ家に送ってやったんだろうが」
「おふとぅんあったかぁい!」
「はぁ…」
掛け布団をもふもふと抱き締めて転がる恋人に背を向けてため息をつく他ない。こっちがどれだけ心配していたのかなんて知らないくせに。
本当はこいつが目の届く場所にいたかった。けど俺にだって付き合いがあるわけで。しばらく悠太を見ていることができなかったんだ。
「やっぱあれを断ればよかったな…」
水を用意しながらブツブツと一人で反省会。
仕切りなんてない寝室に戻ると目尻をトロンと下げて掛け布団を抱き締める悠太の姿があってため息を飲み込んだ。
「まーさん…つかれてる?」
幼女!と叫びそうになって必死に抑える。なんだこの可愛い生物は。神か?いや、天使か。
「お前のせいで疲れてるよ」
ニヤけそうになる口元を抑えて悪態をつく。
あぁこういう時にまで素直になれないなんて損な性格なんだろう。別に大丈夫とか言ってやった方がいいんだろ?分かってんだよそんなことは。またため息をついて頭を掻いてベッドに腰掛ける。
すると甘ったるい声で「まーさん」と呼ばれ、ふわふわの掛け布団で包まれた。
「まーさん」
悠太が肩に顎を乗せて再度俺を呼ぶ。
アルコールを含んだ熱い吐息が耳をくすぐってむず痒い。ていうかエロい。エロいとしか言い様がない。なにこれ誘ってるの?でも流石に酔っている人間を襲うなんて…いや今回に関してはこいつも悪い。分からせるという意味では…。
そんなことをグルグルと考えているとさらに強く抱き締められて欲がずくりと疼いて思わず前かがみになる。
そんな時だった。
「いっしょにねよっ!」
「…え?」
漂わせる香りとは真逆のなんとも無害な声で彼はそう言うと俺の頬をすりすりとしてきた。
「…はは」
その様子はまるで人懐っこい犬で、自分が考えていたあんなことやこんなことがバカバカしくなる。
「ん…そうしようかな」
なんだか全身の力が抜けてそのままゆっくりと裕太の胸に沈みこんだ。目を開けると頬を赤らめて満足そうに笑う顔が見える。
「おやぁすみ…まーさん」
おでこに触れた手はいつもより少しだけ暖かい。
その温もりに緩んだ口角も気にしないで、金色の髪を撫でて引き寄せる。
触れるだけのキスにくすぐったそうに悠太は笑うと瞼を閉じてこてんとベッドに倒れ込んだ。
「…おやすみ悠太」
(暗転)
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