合コン。(NL)

何とも落ち着かない。

というのも初めて来た合コンで初対面の女の子と二人きりになっているからなわけで。


「…料理美味しいですよね」

「…はい」

「お酒強い方なんですか?」

「そう…ですね」


一人にしないって言ってたのに!!

心の中で誘ってきた友人に叫ぶ。この合コンも人が急にこれなくなったので人数調整のために来てほしいと頼み込まれただけなのに。これで奢りじゃなかったら絶対来ていなかった。

別に無理に盛り上げなくてもいいんだろうが、初対面の女の子と無言でいるのは居心地が悪すぎる。

しかしどうしたものだろうか。同性相手でも初対面の人とは話すのが苦手なのに女性相手なんてさらにコミュ障が発揮されてしまう。


「あの…」

「はっはい!」

「あっごめんなさい驚かせるつもりはなくて!」


口下手×口下手というマイナス要素の掛け合わせは残念ながらプラスにならない。気まずい空気と居酒屋の中の喧騒だけが二人の鼓膜を揺らす。

しかし友人や他の人はどこに行ったのだろうか?


「…あの子たちどこ行ったんだろう?」


俺が思うとほぼ同時に女の子がそう零す。しかしそれは思いもしていなかったらしく、彼女はハッと顔を上げて口を覆った。


「ごめんなさいあなたが嫌いというわけではなくて…」

「いや、俺もそう思ったところなので…あーっと気まずいというわけでは…」


あっという間にわたわたとする成人二人の出来上がりである。


「ごめんなさいごめんなさい!」

「こちらこそ…すいません…」


一通り慌てふためくと何とか落ち着いてくる。しかし結構な時間が経ったはずなのに全員が戻ってくる様子はなかった。


「まさかなんですけど…置いてかれてるとかないですよね…?」

「お金払わずに…ですか?」


流石に初対面の人や友人を疑いたくはない。しかしお酒も入っていて思考力が鈍っていて遠慮がなくなった脳内ではそんな考えしか出てこなかった。


「さすがにそれはないと思いますけど…でも…」


目の前の彼女は少し困ったように眉をひそめる。


「気を利かせてくれたって可能性も…」


そしてもう一度考え込むようにしてからそう呟いた。


「気を利かせる?」


そして気を利かせられない俺はそれを復唱する。それを聞いて彼女は再び顔を上げて、今度はぴぃやっ!とよく分からない声で叫ぶと顔を机に突っ伏した。


「どうしました?」

「今聞こえてました?」

「はい…気を利かせたって…あ」


もう一度復唱して自分もようやく気が付く。


今日はさらに酔いが回ってしまいそうだ。



(暗転)

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