共感。(GL)

共感なんて戯言だ。

結局は赤の他人に私の心の内なんて分かるわけない。



「それは酷いよ!」


私の言葉を聞いて目の前の親友はカフェのお洒落な椅子をがたつかせて立ち上がる。


「ちょっ!目立ちゃうから!とりあえず座って」


慌てて彼女を宥めるとまだ不満そうに頬を膨らますものの、何とか席についてくれた。感情が高ぶっているのが分かりやすいのは話している側からしたら嬉しいものなんだろうか。まぁ私には分からないけれど。


「絶対元カレが悪いじゃん…あぁ元カレっていうのも嫌!あいつ!」

「まぁまぁ…」


時は数日前に遡る。端的に言うと私は彼氏にフラれた。私以外に好きな人が出来たらしい。そして親友は元カレが別の女の子とイチャイチャしているところをたまたま見つけて私を喫茶店に誘ってきたというわけだ。正直告白されて付き合っていただけだから特に興味はなかったんだけれど、彼女はそうでないようで。私以上に混乱して怒っている。


「いくら好きな人が出来たって言ってもさ!同じ学校通ってるのに別れてすぐ敷地内でいちゃつく!?」

「いいんじゃないそれは別に…?」

「駄目でしょ!せめて学校外でいちゃつけ!」


よく分からない論述を重ねて彼女は続ける。傍らにあるアイスコーヒーの氷が解けてカランと音を立てた頃、ようやく彼女は荒げてた声を落ち着かせた。


「ごめんね迷惑かけちゃって」

「サチは悪くないよ!悪いのはあいつ!」

「そっか…そうだね」


笑って見せると親友は満足そうに笑う。本当に嬉しそうだ。当事者の私よりも。


「あんな奴見返してやりましょ!」

「そうだね」



共感なんて戯言だ。

結局は赤の他人に私の心の内なんて分かるわけない。

私自身だって分からないのに。



(暗転)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る