感じ方。(BL)
甘い味がした。
おそらく彼が直前まで食べていたグレープ味の飴のせい。
人工甘味料を纏った舌を絡めとると熱い吐息が口の中で飽和する。脳まで溶けてしまいそう…もう目の前の彼はとっくに溶けているが。
唇を離すとかくりと彼が視界から外れる。慌てて抱きかかえると腕に全体重が乗っかって一緒に倒れ込んでしまった。何とか咄嗟に頭だけは守ることが出来たが、代わりに俺の手が犠牲になったようでひりひりと痛みを訴えてくる。
「ごめん」
ふるえた声に視線を向けると赤らんだ顔。これは俺が後に謝らなきゃいけなくなる展開になりそうだ。
「抱くわ」
「は…今日はキスだけって…」
「明日に支障きたさない程度に頑張るから」
「だったら今出てきてる欲を押さえることを頑張れよ!」
べしんと頭を叩かれるが生憎俺の息子が収まる雰囲気はない。俺は目の前の恋人が反抗するのを収めるようにまた唇を重ねた。
苦い味がした。
おそらく奴が直前まで吸っていた煙草のせい。
苦ったらしい舌に絡めとられると酸素が吸えずに二酸化炭素がただ吐き出される。酸欠で倒れてしまいそうだ。
ようやく唇が離れると何とか保っていた力が全て抜けていく。その瞬間、突然体がぬくもりに包まれた。どうやら俺は奴に助けられたらしい。
「ごめん」
流石に罪悪感が勝って謝っておく。しかし俺はすぐに謝ったことを後悔した。
「抱くわ」
「は…今日はキスだけって…」
「明日に支障きたさない程度に頑張るから」
「だったら今出てきてる欲を押さえることを頑張れよ!」
欲情しきった奴の顔に腹が立って頭を叩く。しかし奴はどうやら懲りていないようで。俺は明日の自分に謝りながらも、目の前に迫る恋人の唇を受け入れた。
(暗転)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます