見かけ。(NL)
「はーあ…」
夕陽差す放課後の屋上。緑のフェンスに寄りかかりながら絶賛フラれたて感を醸し出している私はさながら少女漫画の負けヒロインのようだ。まぁ本当にフラれたばっかりなんだけどさ。
「おーやっぱりここにいたか」
「げ」
「げってなんだよ、げって」
そんな私の元に現れたのはまぁまぁチャラい恰好をした私の幼馴染。私があいつのことを好きだってことも、今日あいつに告白することも知っていたはず。どうせあいつが別の女の子と一緒に帰っているのを見て私がフラれたことを悟って馬鹿にしに来たんだろう。
「どうせフラれた私を馬鹿にしにきたんでしょ」
「あ?」
「どうせなら教えてあげるわよ、何があったか」
馬鹿にされるって分かったらなんだか吹っ切れた気がした。
私は自分が告白した時のあれこれを幼馴染に語ってやった。告白場所に10分遅れてあいつが現れたこと。しかもその隣には自分とは真逆の清楚で素朴系の女子がいたこと。そしてあいつは私の告白を聞く間もなく一緒にいた女の子が好きだと宣言したこと。そのままキスまでしちゃって。
「まぁー確かにえっと…濱田ちゃんだっけ…可愛かったけどさぁ!」
「ふーん」
「清楚系が好きなんだってさぁー」
「おぅ」
「まー確かに私はどっちかっていうとギャルじゃん?」
「そこは否定しないけど」
「っそこは否定せんのかい!」
そっけないような返事だった幼馴染がそこだけ食いついて思わず吹き出す。私のキレよいツッコミに幼馴染も笑って、本来校則違反って言われるピアスによく間違えらえれるイヤリングを揺らした。
「でも人前で初キスは酷くない?濱田ちゃんがかわいそう!」
「あーそれは確かにな!」
「ファーストはやっぱ二人きりだよね!」
一度笑っちゃえばもう楽なもの。フラれたことなんてすっかり忘れるくらい、私は幼馴染と笑い転げた。幸い屋上には誰も来なかった。
「まーでもさ」
一通り笑った後、笑いすぎて出た涙をぬぐいながら幼馴染はゆっくりと私の方を向く。そして次にこう続けた。
「お前ってギャルっぽいファッションが好きなだけで実際中身は清楚だよな」
「…ふぁ?」
急に言い始めたものだから、笑っていた私もぽかんとしてしまう。
「ファッションと性格はまた違うじゃん?」
「えっと…」
「それにお前のメイクってギャルじゃなくてナチュラルよりだろ?制服のアレンジとかがギャル風を意識してるだけで」
「ちょっとちょ…」
「そもそもお前基本的に真面目だし、優しいし、飯食う時だって大皿一番に取り分けるタイプじゃん」
「ちょっと待って!」
ぽんぽんと出てくる言葉を何とか遮る。なんだか急すぎて息切れしてきた。
「何急に褒め散らかしてきて!てか私のことめちゃくちゃ知ってんじゃん!!え、私のこと好きだったりするの!?」
混乱しかけた頭を整理するためにとりあえず思ったことを口に出す。それにしても好きだったとか自意識過剰すぎで…
「おう、好きだけど」
「…は?」
「あ、でも流石にフラれた直後に告白すんのは卑怯かなって思うからちゃんと別日に告白する予定」
ハッキリと好き宣言をした上で幼馴染はガッツポーズをして私の方をめちゃくちゃいい笑顔で見た。まさかこんなことになるとは、べろちゅーしてるのを見てた数分前には全く想像つかなかった。けど。
「じゃー告白は気長に待ってるわ」
こいつの今何となく幸せな気持ちだし、乗ってやってもいいか。そう思って考えることを止めた。
(暗転)
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