雨の日。(BL)
雨の日は憂鬱だ。
せっかくセットした髪は秒で崩れるし、傘を差していても絶対に足元は濡れる。いくら決めても雨が俺の格好良さを全て流してしまうのだ。これほどまでに迷惑なことはない。営業妨害だこんなの。
「じゃあ外出なきゃいいじゃないっすか」
そう零すのは目の前でお会計をしているコンビニ店員。俺の住むマンションの近くに勤め始めてからもう数ヶ月経っただろうか。彼は超絶イケメンの俺を見ても一切動じないなかなか稀有な存在だ。
「大体、こんなもの別に明日買ったっていいわけで…」
彼がレジに通したのは包帯とポケットティッシュ。別にどこかを怪我したわけではないし、そもそもこの近くにはドラックストアが一件ある。彼の言うことはごもっともだ。それでも俺はこれをここで、今日買わなきゃいけない理由がある。
「だってしょうがないじゃん、今日君に会いたいって思ったんだもん」
ウィンクを携えてそう彼に告げた。そう単刀直入に言うと俺は彼に惚れている。というのも俺のこの美貌を見て卒倒はおろか驚きすら示さなかったのは彼が初めてだったからだ。その芯の強さというか凄さ?に俺は惚れたのだ。
「あっそーですか」
そして彼は今日も俺の予想通り、冷たい反応。最初こそ初めての反応に戸惑ったが、今ではもはやこの反応すら快感になっている節がある。俺を見る冷たい視線、明らかに客に聞かせるものではないため息、警戒心を解こうともしないオーラ。これに一週間晒された時は確かに心が折れそうにもなった。でもその先に現れた「なんかいい!」という感覚。これを知ることが出来て本当によかったと俺は思っている。
「で、早く帰ってくれないですか」
「え、あぁ!」
いつの間にか会計作業を全て終えて彼は目の前で気を付けをしていた。こうなるともう彼は意地でも俺を帰らそうとする。そこまでお客さんいないんだしもう少しお話させてくれたって…とは思うのだが、一回粘った時に店長を呼ばれたことから長居はしないようにしている。別に店長が来ることはどうでもいいのだが、店長が出てくると彼はいつの間にかバックヤードに戻ってしまうのだ。これでは時間の無駄ってもので。
「じゃあまた明日♡」
「ありがとうございました…気色悪いですね」
投げキッスをすると口元で思いっきりはたかれた。そんなクールなところも大好きだなぁと思いながら俺は自動ドアを潜り抜ける。
結構強かった雨は少しだけ小降りになっている気がした。
(暗転)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます