第3話
「キャラクターを強化し、レベリングをする?」
僕が問いかけると、タナカは答えた。
『訓練、装備充実及びステータスアップアイテム使用により、キャラクターを強化。ステータス面で安全マージンを確保できたら、雑魚狩りをしてレベルを上げる。レベルを上げてさらに安全マージンを確保したら、次の狩場でさらに敵を倒す。そして、レベルを上げる。この繰り返しだ』
僕はタナカの説明がいまいちよくわからなかった。
『まぁ、幸い時間はたっぷりある。いまのお前はレベリングをする前に、頑張らないといけないところがたくさんある』
「たとえば?」
『運動で基礎体力をつけないと、そもそもレベリングにすら着手できない。あとは、飯を食って体格を良くしていくことも必要だな』
いままで読書ばかりで運動をしてこなかった。
加えて、少食でもある僕に対して、いきなりキツめの課題がでてきた。
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それから、僕の生活は変わった。
早朝に起床をして《走り込み》をするようになった。
まだ父さんや母さんが起きてもいない時間に、僕はひたすら村の中を走った。
《走りこみ》を始めたばかりのころは、すぐにヘバって大変だった。
民家から朝餉の炊煙が上がりだすと、僕は帰宅する。
牛乳を必ず1リットル飲んでから、以前の倍の量の朝食を食べる。
これも、最初はとてもきつかった。
牛乳なんか臭くて飲めたものじゃないし、走った後の朝食では吐きそうになった。
でも、必死で食べた。
食べないと強くなれないから。
そして、白魔法の基本書を読む。
『とりあえず《ヒール》を使えるようになれ。それ以外は後回しだ』とタナカが言うので、それに従った。
不思議なもので、何十回も同じ章を読んでいると、徐々に理解が進む。
読んだ先から忘れていた内容が、頭に残るようになり、そして……。
気が付いたら《ヒール》を使えるようになっていた。
昼過ぎぐらいに、クロエがいつも遊びにさそってくる。
彼女との遊びは最優先だ。
『基礎体力のベンチマークに勇者を使えるし、一緒に遊んでいたら好感度も上がるかもしれないからな』
クロエの遊びは極限まで体力を使う。
木刀を振り回したり、組手をしたり、女子力とは縁のない内容ばっかりだったけど。
白魔導士の僕は、《ヒール》を使って食らいついた。
疲れをとったりケガを治したりできる《ヒール》がなかったらと思うと、ゾッとしてしまう。
クロエとの遊びが終わったあとは、《瞑想》の時間だ。
『《瞑想》でHPとMPを自然回復させつつ、早めにMPの上限をあげておきたい』とのことだった。
なんでも、《瞑想》をすることで《ヒール》の使用回数を増やせるようにしておくのが重要だそうだ。
《瞑想》をして、山盛りの夕食を食べた後には、再びトレーニングをする。
夕食後のトレーニングメニューは、《筋トレ》だ。
『《筋トレ》で力を上げておけば、レベリングがしやすくなる』のだそうだ。
ひたすら《筋トレ》をして、動けなくなったら《ヒール》をして、そして再び《筋トレ》をする。
自分を限界まで追い込む。
ひたすら限界まで追い込み続けることで、更なる先の限界に挑戦する。
《筋トレ》は白魔法と同じように、ストイックな僕には向いていた。
『ゲーム』の結末を知らない頃の僕だったら、絶対にこんなに頑張れなかったと思う。
結末を避けるために、僕は歯を食いしばって、そんな日々を一年間続けた。
そして、一年後、僕は急成長を遂げていた。
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