七夕。

「七夕ってだいぶサイコパスなイベントじゃないですか?」

「お前の思考がサイコパスだよ」


夜空を眺める俺を尻目に屋上の中央でジュースを飲んでいる後輩の言葉にため息交じりで返す。


「そもそも先生に隠れて屋上で星空見ようって提案してきた先輩がサイコパスじゃないっすか?」

「まって、サイコパスって言葉がゲシュタルト崩壊してきた」


手で制して話を本題に戻す。


「そもそも七夕がサイコパスってどういうことだよ」

「あー七夕っていうか織姫のお父さんがって感じっすかね」


そう言うと後輩は気だるそうに立ち上がってこちらに歩いて来るや否や俺の横に来て手すりに寄りかかった。


「だって遊びを知らない娘に遊ばしてやるために彦星と会わせたんでしょ?それなのに自分の思い通りにならかなかったからって秒で引き離して仕事やらせようとしてる辺りやばくないっすか?」

「いや、それは織姫と彦星が仕事を一切しなくなったからだろ?」

「彦星はまだしも、普通今まで仕事してなかった子がいきなりそんな仕事と遊びを両立させること不可能でしょ?」


はぁとため息を吐いて後輩は言い終えるとポケットからココアシガレットを取り出して喫煙の真似事をして見せる。

言い分が分からなくはない…が。


「だから織姫のお父さんも七夕に会えるようにしたんだろ?」

「いやいやいや!365日の内に一日にしか会えないて!超ブラック企業じゃん!これが毒親ってやつですか!?」

「声でかいって!」


結構な声量に慌ててココアシガレットを追加させる。


「んーそう言われれば分からなくはないんだけど…さぁ」


今までの言い分にどちらかというと肯定的な意見を示すと後輩の眼が輝く。


「でもそんなこと言い始めたら全部のそういう話にツッコミどころが出てきちゃうから!」

「俺はケチつけていきますよ」

「やめてくれよ」


お酒は飲んでないはずなのに酔っ払いの眼になってきた後輩を連れてきたのに後悔しつつも空を見上げた。

空には薄く雲がかかっている。


「晴れるといいなぁ…」

「案外先輩って俗っぽいっすよね」

「いっとけ」



(暗転)

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