げーむ。
「...なにやってんの」
数秒前から頬を突き刺してくる熱烈な視線が気になってふと隣を見ると、何故かトッポを咥えたまま顔をこちらに向けている友人の姿が目に映った。
「ふぉっふぃーへーむ!」
「それトッポでしょ」
「ふぃふぃの!」
だいぶ前に恋人間で流行った遊びを何故か今頃持ち出してきた友人にため息をつかざるを得ない。
しかしながら唇をこちらに突き出しているその表情は少し胸にクるものがあった。
「そんなにしてほしいの?」
手に持っていたスマホを机の上に置いて友人の顔にぐっと近づく。驚きで丸くなった目に映る自分の顔は思った以上に捕食者のような形相だ。
「いいよ、やってあげる」
教室に響く声。目の前のトッポを食べようと口を開くと友人がぎゅっと目を瞑る。
「...悪ノリがすぎる」
視線が途切れたタイミングを私は逃さない。右手で無防備なトッポを端からポキリと折って、手に入れたそれを自らの口に放りこんだ。
「ん?」
何が起こったのか分からないのか友人は先程以上に目を丸くしている。
「ファーストキスくらいちゃんと好きな人に捧げな」
そう告げて残った残骸を友人の口に押し込む。少し柔らかい感触が指先を掠めたが、これは...ノーカンってことで。
「あっ!ずるい!!」
ようやく自分が騙されたことに気がついた友人は、尖らせていた口で思いっきり息を吸い込んで私に抗議の雨を降らす。
「貞操を守ってあげたんだからむしろ褒め称えるべきでしょ」という言葉は飲み込んでから。
私は舌をぺろりと出して、まだまだお子ちゃまな友人を馬鹿にしてやった。
(暗転)
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