芸術。

AVは芸術だ。

フィクションでありながらそこには生々しいリアリティが存在する。全てが作り物であり、現実。

AVに演技力はいらない。ただエロければいいという考えもあるが、それは違う。あれは彼女、彼らたちの演技力の結晶だ。言うならば緩急とも言えよう。棒のような演技からあれだけの切羽詰まった表情という緩急をつけることでエロパートをよりリアルだと思わせることが出来るのだ。何よりも、体の自然の摂理を大勢に囲まれても異常をきたすことなく出来るのは並みの演技力なんてモノじゃ出来ない。だからこそAV女優は凄いのだ。そして没入感を出来るようなシルエットと言葉、声を仕上げてあくまでも映像内では竿を徹底する男優。俺は彼らこそアカデミー賞の助演男優賞を受賞するに値する人間だと思っている。あれこそ本当の助演だ。何を助けるんだって?それはもう…ナニに決まっているだろう。わざわざ言わせるな。


「ほんと、見てて飽きないよ…AV業界は」


ゆっくりと頷いてことりと小さな音を立ててグラスを置く。そして顔を上げると呆れたと言いたげな顔が出迎えてくれた。


「言いたいことはわか…りたくもないし、お昼間の12時のファミレスで店員さんがいる状態で喋る内容じゃないでしょ」

「あの…ご注文よろしいでしょう…か?」


戸惑いが隠せないといった声に横を向くと、顔を真っ赤にさせながらも業務を遂行しようと必死に頑張っている女性店員さんがいた。


「あー…えっと、和風パスタ、サラダバー付きで、お前は?」

「よくそのテンションで注文できんな」


友人の呆れツッコミを聞き流しながら、次に買う作品はメイドコスプレのものにしようと心に決めたのだった。



(暗転)

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