放課後の会話。
潔く負けたい。
ゲームなら大敗して笑い者になりたいし、恋愛なら自分の目の前でディープキスをかまされるくらいでありたい。
「そもそも負ける前提の話なの草」
「そこは絶対に負けない人間になりたいとかじゃないの?」
眠い目を擦りながらようやく迎えた放課後。
クラスメイトのほぼ全員が部活に精を出す中、特に青春を謳歌することもない俺と幼馴染の二人は小雨が降る窓の外を眺めながらだらだらとくっちゃべっていた。
「いや、放課後で男三人でだらついてるやつが人生勝てると思うか?」
「まぁ…思わないけど」
「だからせめて負け姿だけはかっこよくありたいだろ!」
「その前に勝てる努力をしろよ」
高らかに宣言したが、二人に正論をかまされてしまった。それもそうだろう。俺とほぼ同じ状況の自分も勝ちを否定されたようなものなのだからな。でもそうだったら今の正論はこの二人にも効くってことであり…。
「お前ら俺に正論をかましたら自分も辛くなるだけだぜ」
「俺はそもそも勝とうとも負けようとも思ってねぇし」
「まぁ引き分けくらいがちょうどいいよねー」
「くそっ!」
ひらりと躱されて宙を切った俺の渾身ストレートはそのまま行き場を失って俺の心をえぐった。明らかに落ち込んでいる俺を慰めるようにしとしとと雨は降り続けている。
今日も教室はただただ平和だ。
(暗転)
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