田舎の本屋。
「じいちゃん、これどこ置けばいい?」
「あーそれなぁ…えぇと」
古びた本屋の片隅で、埃を被った本を整理する。おおよそ遊びたい盛りの中学生とは思えない休日の過ごし方をして早半年。最初こそお駄賃目当てでやっていたこの作業もすっかりと習慣付いてきて、今はもうこの古びた本たちに愛おしささえ感じるようになった。
「結構片付いてきたなぁ…」
本を仕舞ってから辺りを見渡す。今までは自分の背丈以上あったのにもう腰辺りまで来ている。まぁ…俺の身長が伸びたという可能性も否めないが。
「これで何とかこの店を畳むことが出来そうだ」
「やっぱ辞めちゃうの?」
「まぁ…もうワシも歳だからなぁ」
ばあちゃんを亡くしてから、じいちゃんは唯一の形見であるこの本屋を守ってきた。最初は会社員と掛け持ちで、それが難しくなってからは昇進もあったのにそれを蹴ってまでここを守ってきた。それでも、年齢には勝てないんだろう。
「そっかぁ」
「誰かワシの代わりにやってくれればいいんだけどなぁ」
なんだろう、やけに視線を感じる。
「…何?」
視線を辿ると見たことないくらい目を輝かせているじいちゃんがいた。
「え、俺にやれっての?」
そう言うとじいちゃんは首を縦に振る。じいちゃん的にはやっぱりこの店をなくしたくないんだろう。それにこの店は片田舎唯一の本屋、町の人たちもここがなくなったら困るという声も聞く。それは分かる…が。
「いやでも俺学校あるし…」
「そこは何とかする」
「経営なんて出来ないよ?」
「経営は全部ワシがやるから…店番だけでいいから」
「うーん」
店番だけとはいえ、今まで休日だけだったのが平日の放課後まで捧げてしまうことになる。せっかくの青春を全てこの本屋に捧げることになる…か。
辺りを見回す。まだそこには自分が読んだことのない本が山積みになっていた。
「…分かった、その代わりになんだけど」
「なんだ?」
「ここにある本読んだりしてもいい?」
「もちろんじゃ!」
この本たちに青春を捧げると考えたら悪くないかもしれない。そう思いながら俺は手元にあった本を一冊手に取った。
(暗転)
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