第3話 愛と呼べない夜を越えたい
カラオケで歌を歌いまくった。目の前にいる好きなやつのために。
俺はギター弾きだ。歌はうまくない。俺らはだいたいこうしてカラオケやら居酒屋やら、ラーメン屋やらにいる。どうしてって友だちだからだ、まだ。そいつは女っけがなくて、嫁の貰い手が心配なくらいに男勝りで、とにかく声がでかい。うるさいやつだ。髪も短いし、スカートなんてめったにはかないし、大口あけて飯を食う。美味しそうに食べるんだ。歌も悪くない、本人は音痴だって気にしてるが。だから2人して楽しく歌えるんじゃないか。ギターを弾いていると静かに、時々鼻歌で目を閉じて聞き入ってくれる。俺の作った曲を一番に聞かせる相手だ。
愛なんて友愛もあれば、恋愛もある。愛らしい動物や愛に満ちた売店のおばちゃんとか、愛着のある物もある。なんにでも愛は生まれる。すぐ。
だから今更言葉にしなくたって、愛なんてはっきりと名前を付けるもんじゃないんだよ、俺からお前への気持ちなんてのは。
わかるだろ、夜だって一緒にいて。安心しきってる顔をみると若干イライラするが、俺を信じているのがわかる。好きとか愛とか通り越して、もはやちょっと倦怠期って親友に言われた。始めてすらないんだよそもそも。気づいたら側にいたやつを今更恋人やらと分けたくない。嫌がることして離したくない。もうお前のいない生活など考えられない。だけど伝えたい。
俺のギターはお前のために歌う
愛の歌を、この夜を越えるために
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