第2話 越えたい夜に愛を呼べない

 明日になるまでの時間

 つまり日が沈んで真っ暗になってまた日が昇るまでの時間

 越えられない夜はまるで真っ暗な壁のようだ

 君は今何をしているのかな

 僕は仕事をしている



 いろんなことを忘れてしまった人たちと、夜を越えようとしている。僕もいつか同じように大切な人を忘れてしまうかもしれない。誰にでもある身近な恐怖だ。


 忘れてしまっても、時々あいまいな記憶だけが独り歩きする。夜中に探してしまう。だけど名前も言えず、顔もわからず。逆に名前だけ、思い出のエピソードだけが残る。もやがかかっていて、もどかしい。手足を動かす。


 だけど僕らに止められる。危ないから、今はできないから待っていて。どうしてこんなに元気なのに、大切な人が目の前で呼んでいるのに、このわけのわからん人に邪魔されるのか。あるいは、大切な人が自分のことを忘れてしまって他人行儀にしてくる。敬語ばかり使ってくる、言うことを聞いてくれないのか。いったいあの子はどうしてしまったの。僕らを誰かと勘違いしてしまう。みんな彼女の子どもになる。



 愛とはなにか、愛の言葉はたくさんある

 どれを選べば彼や彼女らに伝わるのか

 そして君に伝えられるのか

 君と僕で忘れられない思い出をどれだけ作れるのか

 いつか忘れてしまって、なにもできなくなってしまっても

 愛をなくさずにいられるのか

 愛とは消えるものなのか

 愛とは忘れてしまっても消えるものじゃないと信じたい

 夜を越えたい、君ともっと越えていきたい

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