第319話 効果は抜群だ
ヴェノムグラディウスを失ったことにより、タキシムスカルアーマーは<剣術>が宝の持ち腐れとなった。
そんなタキシムスカルアーマーをライトは煽る。
「おやおや、剣を持たない<剣術>持ちなんてポンコツのできあがりじゃないか」
「赦さん! 【
「【【【
煽り耐性がないらしく、直線的な攻撃を仕掛けるタキシムスカルアーマーに対し、ライトはその動きを拘束しようと3本の光の鎖を射出した。
捕まる訳には行かないので、タキシムスカルアーマーは左に大きく跳んで避けた。
しかし、その先にはヒルダが待ち構えていた。
「【
ジャンプして避けたことで、空中で避ける軌道を変えることができなかったタキシムスカルアーマーは水の牢獄の中に閉じ込められた。
「【【【
その瞬間、ライトは三重に【
タキシムスカルアーマーが強者であることから、聖水の濃度を3倍にしたのだろう。
VITが高かろうと、聖気が弱点なのはアンデッド共通の特徴なので閉じ込められたタキシムスカルアーマーは牢獄の中で全力で藻掻いている。
ところで、ヒルダは今当然のように言葉を交わさずにライトに合わせた訳だが、これはライトとアンジェラが言葉を交わさずに意思疎通できるなら、自分達にそれができないはずがないという考えあってのことだ。
ライトが煽った瞬間からこうなることを予測していたので、ヒルダは今ドヤ顔である。
「ヒルダ、ナイス」
「ライトのことだもん、どう動くかなんて喋らなくてもわかるよ」
「旦那様、奥様、お熱くなってるところ申し訳ありませんが、タキシムスカルアーマーに変化があります」
アンジェラに声をかけられて聖水の牢獄の中を見ると、タキシムスカルアーマーが<
その影響で聖水内でブクブクと音が鳴り、バチンという音と共に周囲に聖水が弾け飛んだ。
MPを惜しまない強硬手段を取ったことで聖水から抜け出せたようだが、タキシムスカルアーマーの体はあちこちが焦げていた。
「くっ」
タキシムスカルアーマーは左手に持っていた盾を体が受け付けなくなったらしく、苦悶の表情とともに地面に落とした。
銀色に変わったその盾は、間違いなく
濃度300%の聖水により、タキシムスカルアーマーの盾は
アンジェラは<
「旦那様、どうぞ」
「ありがとう」
<鑑定>を使って調べている暇はないので、ライトはそれを<
「おのれ、剣だけでなく盾までも・・・」
「まだ<格闘術>があるじゃん。かかってきなよ」
「舐めるな! 【
走って来たことによる運動エネルギーを上乗せしたまま、タキシムスカルアーマーがおびただしい数の蹴り放ちながらライトに向かって突撃する。
だが、それを見逃すような真似をする者はいない。
「【壱式:
「ぬぁっ!?」
アンジェラの投げたグングニルが足の裏から突き刺さり、【
グングニルがアンジェラの手元に戻って来た瞬間には、ヒルダが次の攻撃を仕掛けていた。
拾
「【
「【
ヒルダの技にライトが抜群の反応支援を披露して、うねる聖水の鞭が倒れたタキシムスカルアーマーを打つ。
「ぐぉぉぉぉっ!」
<物理攻撃耐性>はあっても、<魔法攻撃耐性>は会得していない。
しかも、聖水で殴られればVITの数値が高かろうと関係ない。
タキシムスカルアーマー脳内に敗北の二文字が浮かんだ。
それは実現するまでそう時間はかからないだろう。
「【【【・・・【【
光の鎖が15本現れ、3本ずつ両手両足と首を地面に縫い付けるように拘束した。
「ライト、ちょっと試したいことがあるの。やっても良いかな?」
「良いけど何するの?」
「こうするの。【
ヒルダが水をグラムに纏わせたことで、ライトはヒルダの意図を理解した。
「なるほどね。【
「ありがとう。以心伝心だね」
「長い付き合いだからね」
ヒルダが試そうとしたのは、聖水でカバーしたグラムで<聖剣術>を使った場合にそれは<物理攻撃耐性>を持つアンデッドにどこまで効くのかということだ。
一般的には、武器を聖水で濡らしただけでは数回使えばただの武器に戻る。
では、【
タキシムスカルアーマーという
「【
「ぎぃぃぃぃぃあぁぁぁぁぁっ!?」
聖水を纏わせたグラムを構え、ヒルダがタキシムスカルアーマーに6連続の突きを放った。
すると、タキシムスカルアーマーの苦しみ方は聖水を体内に注がれたに等しいこともあって尋常ではなかった。
今までの苦しみなんてまだ前座だったと断言できる程、ヒルダの6連続の突きの効き目はばっちりだった。
<鑑定>で攻撃前後のHPの減り方をモニタリングしていたライトは、聖水を纏わせた<聖剣術>が<物理攻撃耐性>の影響を受けないことを知った。
「効果は抜群だ」
「そう? 良かった」
「良い着眼点だよ。流石はヒルダだね」
「エヘヘ」
「じゃあ、削れるだけ削ったしとどめ刺しちゃうから。【
パァァァッ。
《ライトはLv74になりました》
《ライトはLv75になりました》
《ライトの”セイバー”が”エインヘルヤル”に更新されました》
ヘルのアナウンスが終わると、ライトはすぐに<鑑定>で”エインヘルヤル”の取得条件を確かめた。
調べてみた結果、この称号を与えられた者は死後に
異世界転生があるのだから、
「ライト、聞いて! 称号に”エインヘルヤル”が加わったの!」
「若様、私も加わりました」
「僕もあったよ。どうやら、ヘル様が戦功を称えた者のみ与えられる称号で、死後に
「ライトと死んでも一緒! 良かったぁ!」
「ヘル様、感謝いたします」
(
3人で喜びを分かち合った後、ライト達は事後処理に移った。
ライトは【
「この思念玉はヒルダが使って。前回はアンジェラが使ったし」
「良いの?」
「私も賛成です。奥様のグラムも強化すべきだと思います」
「わかったわ。それじゃあ、遠慮なく使わせてもらうね」
ヒルダはライトから思念玉を受け取ると、それをグラムに吸収させた。
すぐにライトが<鑑定>を発動し、グラムの強化ができたか確かめた。
すると、グラムには新たに使用者のDEXを1.5倍にする効果が追加されていた。
<鑑定>の結果をライトが話すと、ヒルダは笑顔になった。
「これでライトの細かい作業を手伝えるね」
「ありがとう」
DEX、つまり器用さが求められる作業を行う場合、どうしてもライトはヒルダではなくアンジェラに頼っていた。
ヒルダもDEXは高い方ではあるものの、アンジェラと比べると低いからである。
アンジェラに並ぶとまではいかなくても、今回のグラムの強化でかなりDEXの差は埋まった。
これで自分もライトに頼ってもらえるとヒルダが喜ぶのは当然のことだった。
それから、ライトは<
取り出した銀色の盾だが、それはとぐろを巻く蛇のデザインだった。
蛇のうろこは赤く染まっており、真ん中にある蛇の顔に光る目も赤かった。
ライトは取り出してすぐに<鑑定>を発動した。
(スヴェルってこれは神話通り盾なのか)
ライトが知る北欧神話では、スヴェルという盾が存在した。
このスヴェルはその神話のイメージに近かったのだ。
その効果は、MPを消費することでスヴェルが氷を纏えるというもので、その氷はMPが尽きない限り蛇の胴体を伸ばす要領で大きさを自在に調整できる。
使用するデメリットは、使用者が寒さを感じると強烈な眠気に襲われるというものだった。
ライトには<
ライト以外が使うならば、少なくとも<状態異常半減>を必要とする。
そこまで調べ終わると、ライトはスヴェルを<
さて、タキシムスカルアーマーを倒した訳だが、この戦闘は終わっていないと言えよう。
何故なら、まだ捕縛した
ライト達は
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