第136話 今日のカタリナは元気だな。本物だよね?
カルマ大墳墓に到着すると、入口からすでに瘴気が濃い状態だった。
「これは酷い。【
あまりの瘴気の濃さに我慢できず、ライトは入口付近の空気を浄化した。
これで、ここで待機となるランドリザードに汚れた空気を吸わせずに済む。
「会長さん、私がここでランドリザードの番をしてるよ」
「そう? クロエだけだと不安じゃない?」
「ヒルダ、私も残るよ」
「任せて良いの?」
「眠いから残る」
「イルミ姉ちゃん、それだと見張りにならないじゃん。【
見張りという名の居眠りをする気満々なイルミを見て、ライトは眠気覚ましに【
「うん、スッキリした。流石はライト」
「見張りなんだから、ちゃんと起きててね」
「ダーイン君、私が稽古をつけてもらえば、イルミは起きてられるよ」
「稽古、良いなぁ」
稽古と聞いて、アルバスが羨ましそうに呟いた。
「だったら、アルバス君とクロエが交代すれば良いんじゃない? 別に、クロエだって絶対留守番したいって訳じゃないでしょ?」
「そうだね。じゃあ、アルバス君、お願いできる?」
「任せて下さい!」
アルバスはイルミと2人きりになれるので、クロエの提案を快諾した。
その結果、留守番がイルミとアルバスで、カルマ大墳墓に入るのはライトとヒルダ、クロエに依頼者のスカジとカタリナの5人になった。
ライト達はカルマ大墳墓に足を踏み入れ、そのまま目当てのフレッシュスライムとウエポンゴーストを探し始めた。
入口付近ではアンデッドが出ないので、ライトは気に生ったことをクロエに訊ねた。
「クロエさん、いつになったら僕のことを名前で呼んでくれますか?」
「それは・・・、良いの?」
クロエは恐る恐るという表現が正しい様子で、ヒルダの顔色を窺うように訊いた。
どうやら、ヒルダが怖くてライトだけ名前で呼べなかったらしい。
「名前で呼ぶぐらいは別に構わないよ」
「そ、それなら、ライト君と呼ばせてもらおうかな。イルミはイルミなのに、ライト君だけ苗字呼びって変だったし」
「そうですよ。僕だけ距離がある感じがしました」
「ひぃっ!?」
ライトが距離を感じると言った瞬間、ヒルダの目つきが険しくなってクロエはビビった。
クロエがヒルダにビビったのだとわかると、ライトはヒルダを注意する。
「ヒルダ、クロエさんを怖がらせないで」
「わかった」
クロエは
むしろ好きな方だ。
しかし、ここでライトに軽々しく話しかければ、ヒルダを不用意に刺激してしまうことを理解している。
それゆえ、本当はライトとも単に生徒会の仲間として仲良くなりたい気持ちはあっても、ヒルダを警戒してライトに声をかけられないのだ。
でも、ライトがある程度ブレーキになってくれるのなら、クロエはライトに話しかけられるとも思った。
ライトを観察する限り、ライトが自分に惚れる可能性は0%だ。
ヒルダを大切にしており、時々展開される甘い空間のせいで何度砂糖を口から吐き出しそうになったことか。
とりあえず、ライトは名前呼びで良いということで話がまとまった。
そのすぐ後に、クロエが真っ先にアンデッドに気づいた。
「前方にアンデッド発見。数3。スカルラット」
「私達が戦う。カタリナ、良い?」
「わかりました」
スカジが戦うと言い出し、カタリナにも戦うように声をかけると、カタリナは頷いた。
「【
「【
スカジがキョンシーを召喚し、カタリナはトーチバードを召喚した。
キョンシーとは、額に札が貼られた灰色の肌をした武闘家と表現するのが相応しい。
スカジが使役できるアンデッドの中で、近接戦闘に向いているのはキョンシーしかいないのだが、キョンシーはLv25でありスカルラットの相手なら容易くできる。
その一方、カタリナはまだ、トーチバードとスケルトンしか使役できない。
スケルトンはデスナイト用であり、フレッシュスライムとウエポンゴーストを使役できるようになるまで温存する必要があるから、トーチバードだけが使える戦力だと言える。
だが、カタリナはトーチバードを集中的に鍛えたのでLv20になっている。
そうであるならば、キョンシーと同じくスカルラットの相手は問題なくこなせる。
「キョンシー、左と真ん中のスカルラットを砕いて」
「トーチバード、右のスカルラットを燃やして」
スカジとカタリナがそれぞれ指示を出すと、キョンシーとトーチバードはそれに従った。
キョンシーの方がAGIが高いので、すぐにスカルラットの正面まで移動し、連続して蹴りを放ち、スカルラット2体を倒した。
カタリナのトーチバードは、自らの前に鬼火を創り出し、それをスカルラットに放った。
鬼火はそこまで速くはないが、それでもスカルラットを仕留めるだけの速さはあり、スカルラットはあっけなく倒された。
「追加でアンデッド2体。スカルホーク」
クロエが後続のアンデッドを見つけ、ライト達に知らせた。
「カタリナ、丁度良い。【
「はい!」
「邪魔なのは、私がやる。キョンシー、1体落として」
スカルホークは、【融合;《フュージョン》】の素体になるらしく、スカジはカタリナのために邪魔な1体をキョンシーに排除するように命令した。
キョンシーは足元に転がっている石を拾い集め、スカルホークの片割れにそれをどんどん投げつけた。
懸命に避けるスカルホークだったが、4発目の石が翼に命中してバランスが崩れ、そのまま地面に墜落した。
そこをキョンシーが移動して頭を踏み潰し、スカルホークは残り1体となった。
1体になってしまったことで、仲間をやられた怒りでスカルホークはキョンシーに向かって急降下した。
「カタリナ、今!」
「はい!」
「【
ブォン。
割り込むようにカタリナが円陣を起動すると、それがスカルホークを閉じ込める結界となった。
結界が明滅しながら収縮し始めたのを確認して、カタリナは手を前に伸ばしてからグッと握った。
それにより、一気に結界が圧縮してスカルバードと同じサイズになり、結界の明滅が止まってからスカルホークがふわりと地面に着陸した。
カタリナは使役に成功した。
「カタリナ、グッジョブ。そのまま【
「やってみます! 【
ピカァン!
スカジに促され、カタリナは次のステップに移った。
カタリナが技名を唱えると、トーチバードとスカルホークが光に包み込まれた。
光が収まった時には、青い火を纏ったスカルホークの姿だけがあった。
「おめでとう、カタリナ。これがトーチホークだよ」
「ありがとうございます、スカジ先輩」
(ペル〇ナ合体みたいだな)
ライトは【
そんな雑念を振り払うと、【
-----------------------------------------
名前:なし 種族:トーチホーク
年齢:なし 性別:雌 Lv:25
-----------------------------------------
HP:1,500/1,500
MP:2,000/2,000
STR:1,000
VIT:1,000
DEX:1,500
AGI:1,500
INT:1,500
LUK:700
-----------------------------------------
称号:
二つ名:なし
職業:なし
スキル:<飛行><鬼火><探知><怪閃光>
装備:なし
備考:なし
-----------------------------------------
(”
ステータスを見て、ライトはその強さを把握すると同時、トーチホークは【
「良いの。カタリナが強くなってくれれば、私も嬉しい」
「もっと頑張ります!」
(今日のカタリナは元気だな。本物だよね?)
普段のカタリナならばもっとおとなしいのだが、今日はスカジと一緒だからか元気なので、ライトは目の前のカタリナが偽物ではないかと疑った。
だが、そんな馬鹿な考えは止めて、ライトは地面に散らばった魔石の浄化を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます