第137話 きらりと光るものがある。採用!
魔石の回収後、ライト達は先に進んでフレッシュスライムとウエポンゴーストの捜索を再開した。
少し歩くと、空を飛んでいたトーチホークが高度を下げ、カタリナの周囲をグルグルと回った。
どうやら、<探知>でお目当てのアンデッドを見つけたらしい。
「ライト君、あっちだって」
「わかった」
カタリナが指差した方角に向かうと、ライト達は数分で肉塊の海に辿り着いた。
肉塊の海と表現したのは比喩表現だが、そこにはフレッシュスライムのコロニーがあった。
フレッシュスライムは、フレッシュゴーレムの成り損ないである。
フレッシュスライムがうじゃうじゃいることから、フレッシュゴーレムが出現するには瘴気が僅かに足りなかったのだろう。
ちなみに、フレッシュゴーレムの成り損ないをフレッシュスライムと呼ぶのは、フレッシュスライムが<分裂>を会得しているからだ。
このコロニーは、おそらく1体のフレッシュスライムからできたのだと推測できる。
かなりの数がいるので、スカジとカタリナだけでは厳しいと思ったのか、クロエがヒルダに話しかけた。
「数が多いね。会長さん、私も戦って良い?」
「別に構わないけど、大丈夫なの?」
「大丈夫。実は、春休みに行商の売り上げで槍を聖鉄製に新調したから、実戦で使ってみたかったんだ」
「その槍はシュミット工房で買ったの?」
ライトの協力で、シュミット工房では聖鉄製の武器を売り出している。
ライトが聖水を作っている分、他の店よりも安くなっているが、それでも一般的な
そんな背景を理解していたので、ヒルダはクロエが聖鉄を安く買えた場所を予想できた。
「そうなの。噂の
「そう。じゃあ、やれるだけやってみて。危なかったら助けに入るから」
「了解。スカジさん、カタリナさん、ということで私も戦うんでよろしく」
「ありがとう。2体だけ、絶対に残して」
「よろしくお願いします」
「任せて」
スカジとカタリナに声をかけた後、クロエは槍を持ってフレッシュスライムのコロニーに向かって突撃した。
「はっ!」
ブスリと音がすると、クロエの槍がフレッシュスライムの核を貫いた。
槍がフレッシュスライムから抜かれると、フレッシュスライムの体が消えて魔石だけ残った。
「流石は聖鉄だね! そりゃっ!」
クロエに<槍術>のスキルはない。
それにもかかわらず、クロエの動きは<槍術>を会得した者と遜色なかった。
「キョンシー、左側から行きなさい!」
「トーチバード、右側から燃やして」
クロエだけには任せておけないので、スカジとカタリナもそれぞれキョンシーとトーチホークを戦わせ始めた。
ライトとヒルダは周囲を警戒しつつ、3人の戦いを見守った。
特に危なげなく、フレッシュスライムの数は必要数の2体まで減ると、スカジとカタリナは使役の準備に移った。
「カタリナ、やるよ!」
「はい!」
「「【
ブォブォン。
残った2体のいる場所に円陣を起動すると、それがフレッシュスライムを閉じ込める結界となった。
結界が明滅しながら収縮し始めたのを確認して、スカジとカタリナは手を前に伸ばしてからグッと握った。
それにより、一気に結界が圧縮してフレッシュスライムと同じサイズになり、結界の明滅が止まった。
スカジとカタリナは、無事にフレッシュスライムの使役に成功した。
「「【
シュイン。
折角使役できたのに、あっさりと外敵に倒されては堪らないので、スカジもカタリナもすぐにフレッシュスライムを送還した。
「ふぅ。良い運動だった」
「お疲れ様」
「お疲れ様です。【
「ありがとう、会長さん。ライト君もありがとう。掃除要らずだね」
フレッシュスライムには、残念ながら生臭さがある。
だから、ライトはドロップした魔石を浄化するついでに、クロエが使った聖鉄製もの槍も浄化してあげた。
常識的に考えて、生臭い槍を使いたい者はいないから、クロエはライトの気遣いに感謝した。
魔石の回収を済ませると、ライト達はウエポンゴーストの捜索に移った。
ウエポンゴーストを探して歩く間に、ライトは疑問をスカジにぶつけてみた。
「ホーステッドさん、ウエポンゴーストの形ってなんでも良いんですか?」
「【
「では、槍のウエポンゴーストを使役して、【
「正解。私は斧とか槌みたいな重い武器を希望する」
「私は近接武器ならなんでも良いと思ったけど、クロエさんの戦闘を見て槍が良いなって思ったよ」
「いやぁ、照れるね」
カタリナに褒められ、クロエは嬉しそうに笑った。
そこに、トーチホークがカタリナの視線の高さまで高度を下げたことから、ウエポンゴーストを見つけたのだとその場にいる全員が理解した。
「あっちです」
カタリナの指差す方向に、ライト達は再び向かった。
今度は実体のない剣が、ライト達の上空を漂っていた。
「剣ですね」
「剣はウエポンゴーストの中で、最も数が多い。8割は剣の形」
「ハズレですか。【
パァァァッ。
スカジとカタリナの望むウエポンゴーストではなかったので、ライトが一瞬で片付けた。
「ライト、【
「その手があった。【【【【【
ヒルダの提案に頷くと、ライトは全員に【
この技には、一時的にLUKを上昇させる効果がある。
今必要とされる技ではあるが、滅多に使わないせいで
それなのに、ライトのマイナーな技まで覚えているあたり、ヒルダのライトへの愛を感じる。
この場の全員のLUKを一時的に上げ、そのまま付近を捜索していると、カタリナが望む槍の姿をしたウエポンゴーストを見つけた。
ウエポンゴーストは、戦力の差があり過ぎると思ったのか、勝負を捨ててライトに特攻した。
「【
ブォン。
割り込むようにカタリナが円陣を起動すると、それがウエポンゴーストを閉じ込める結界となった。
結界が明滅しながら収縮し始めたのを確認して、カタリナは手を前に伸ばしてからグッと握った。
それにより、一気に結界が圧縮してウエポンゴーストと同じサイズになり、結界の明滅が止まってウエポンゴーストがそのまま宙に浮いた状態で静止した。
カタリナは使役に成功したとわかると、すぐに【
「【
スケルトンとフレッシュスライム、ウエポンゴーストがこの場に揃ったので、カタリナはスカジの方を向いた。
スカジは無言で頷き、先に【
「【
ピカァン!
カタリナが技名を唱えると、3体のアンデッドが光に包み込まれた。
光が収まった時には、剣ではなく槍を持ったデスナイトの姿だけがあった。
「デスナイト、片膝をついて」
この指示を聞かなかったら、【
もしも失敗したとわかれば、すぐに討伐に移行しなければならない。
しかし、その心配は杞憂に終わり、デスナイトはカタリナに向かって片膝をついた。
「おめでとう、カタリナ。成功だよ」
「スカジ先輩、私、やりました!」
(カタリナ、今日だけで1週間分の元気を使い果たしてないよね?)
カタリナが飛び跳ねて喜ぶものだから、ライトはデスナイトの使役とは別の心配をした。
それはともかく、【
その後、今度はスカジのウエポンゴーストを探したのだが、次に現れたウエポンゴーストの形はモーニングスターだった。
「きらりと光るものがある。採用!」
(えっ、これで良いの?)
モーニングスターを持ったデスナイトなんて、ライトには想像がつかなかったが、依頼者であるスカジが良いのであれば余計な口出しをする訳にはいかない。
スカジも【
目的が果たされたので、ライト達はカルマ大墳墓から教会学校に戻ることにした。
カルマ大墳墓の外に出ると、ランドリザードを放置して模擬戦で白熱しているイルミとアルバスの姿があり、ライトとヒルダによる説教タイムに突入した。
イルミはおやつ抜き、アルバスは雑用追加の罰が下され、帰路でしょんぼりする2人がいたが、それは自業自得と言えよう。
なんにせよ、スカジとカタリナからの依頼は達成されたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます