第31話 流石はライト! お姉ちゃん、何が出て来てもボコボコにしちゃうんだからね!

 ライト達が蜥蜴車リザードカーから降りると、カルマ大墳墓からアンデッドが溢れ出していた。


 スカルバード、スカルラット、スカルドッグ、スカルスネーク、スカルリザードと骨三昧である。


「この程度の数しかいないなら、僕の戦力確認も兼ねて露払いをしましょう」


「ライト君、そんなことができるんですか?」


 ジェシカは【昇天ターンアンデッド】を知らないので、ライトがいきなり実戦で戦えるのか心配した。


 しかし、ライトがそれに答える前にヒルダが口を開いた。


「会長、ライトに任せて下さい」


「ヒルダ・・・。わかりました。ライト君、お願いします」


 ヒルダが身内贔屓ではなく本当に問題ないと信頼しているのだとわかると、ジェシカはライトに任せることにした。


「【範囲昇天エリアターンアンデッド】」


 パァァァッ。


《ライトはLv21になりました》


《ライトはLv22になりました》


 アンデッドの集団が一瞬で消えると、ライトの耳にレベルアップを告げるヘルの声が届いた。


 パーティーを組むと、経験値は貢献度に関係なく等分されることはライトも知っていた。


 ただし、ヘルが告げるレベルアップが自分のものしかわからないことはここに来て初めて知った。


 とはいえ、ライトは今、それとは別のことを考えていたのだが。


 (ダーインスレイヴの効果がヤバい。効き目が今までの倍になってる)


 ダーインスレイヴを手に入れて初めてのアンデッドとの戦闘だったので、ライトは今になってようやくダーインスレイヴの価値を改めて実感した。


「こんなことが・・・」


「衝撃」


「まさかここまでとは思いませんでした」


「ドヤァ」


「なんでイルミが偉そうなのよ」


 アンデッドの集団があまりにもあっさりと消滅したので、ジェシカとメイリン、シスター・マリアは驚きを隠せなかった。


 それに対してイルミはライトならこれぐらい当然だとドヤ顔になり、ヒルダはそれにツッコミを入れてはいるが誇らしげな表情だった。


 驚いている3人を放置して、ライトがテキパキと散らばっている魔石を回収し始めた。


 ライトが魔石を拾っているのを見て、魔石が浄化されていると気づき、イルミとヒルダもそれを手伝った。


 3人が魔石を回収し終えると、ジェシカ達が正気に戻った。


「ライト君の<法術>は本当に凄まじいですね」


「瞬殺」


「やはり連れて来て正解でした」


 過去にルクスリアしか使えなかったせいで、<法術>の記録はほとんど残っていない。


 それゆえ、今目の当たりにした光景を見て、ジェシカ達は揃ってライトが強力な助っ人であると認識した。


 だが、物事はそう簡単には進まない。


「今の技は欠点があるので乱発はできません」


「欠点があるんですか?」


 ジェシカは【範囲昇天エリアターンアンデッド】が発動した時の様子を思い出し、特に欠点があったようには思えなかった。


「重大な欠点です。今のようにその場にいるアンデッドを全滅できれば問題ありませんが、もしも数を減らす程度に留まると、残ったアンデッド達に僕が狙われます」


「・・・そういうことですか。あれだけの技を使えば、どうしたってヘイトを稼いでしまいますものね」


「その通りです。僕はアンデッドの天敵でしょう。ですから、アンデッドがこの技を見れば間違いなく僕を狙います。そうすると、僕が本来するべき治療や支援に支障をきたします」


 単体を狙う【昇天ターンアンデッド】であれば、まだヘイトコントロールもできる。


 だが、範囲攻撃になる【範囲昇天エリアターンアンデッド】だと、ライトでもヘイトコントロールは難しいのだ。


「わかりました。それでは、ライト君には後方支援を任せます。ですが、実力が拮抗した時には力を借りるかもしれません。無論、ヘイトはそれまでに私達が十分に稼ぎましょう」


「お願いします」


 ジェシカとライトで話がまとまると、生徒会パーティーはカルマ大墳墓に入った。


 ちなみに、蜥蜴車リザードカーに誰も残らないと蜥蜴車リザードカーを牽引するランドリザードが不安がる。


 だから、シスター・マリアが留守番することになった。


 アンデッドから自身と蜥蜴車リザードカーを守り、ライト達の退路を確保するには、生徒会のメンバーでは心許なかったからである。


 生徒会パーティーの布陣はジェシカとイルミが前衛、ヒルダが中衛、メイリンが後衛となっている。


 メイリンは<土魔法>を会得しており、ジェシカとイルミがヘイトを稼ぐと攻撃をするスタンスだ。


 そこに後方支援のライトが加わり、防御や回復ができるようになれば生徒会パーティーの生存率は更に高まると言える。


「戦闘に入る前に、ジェシカさんとイルミ姉ちゃん、ヒルダの武器を強化します。【聖付与ホーリーエンチャント】【聖付与ホーリーエンチャント】【聖付与ホーリーエンチャント】」


 ライトが技名を唱えると、ジェシカのハルバード、イルミのガントレット、ヒルダの剣に神聖な光が付与された。


「ライト君、もしかして、この状態でアンデッドに攻撃すると、幽体のアンデッドにも攻撃が通りますか?」


「通ります。アンデッドに効き目のあるオーラによって自分の武器がコーティングされたと考えて下さい」


「わかりました。これであればヘイト管理も楽にできそうですね。感謝します」


「流石はライト! お姉ちゃん、何が出て来てもボコボコにしちゃうんだからね!」


「ありがとう、ライト」


「どういたしまして」


 戦闘準備を整えてそのまま先に進むと、ライト達の視界にデスナイトとその配下のアンデッドの集団が待ち構えていた。


 ライトはデスナイトの名前は知っていたが、生で見るのは初めてだった。


 歪んだ兜にボロボロで固まった血の色をしたマント、瘴気まみれの片手剣、錆びた盾を装備した大柄なスケルトンの見た目だった。


 その配下にはただのスケルトンが10体おり、デスナイトの前に隊列を組んで待機していた。


 (これがデスナイトか。どれぐらい強いんだ?)


 ライトはデスナイトの強さを調べるため、<鑑定>を発動した。



-----------------------------------------

名前:なし 種族:デスナイト

年齢:なし 性別:なし Lv:30

-----------------------------------------

HP:3,000/3,000

MP:2,000/2,000

STR:1,500

VIT:1,500

DEX:1,000

AGI:1,000

INT:1,000

LUK:750

-----------------------------------------

称号:なし

二つ名:なし

職業:なし

スキル:<剣術><盾術><呪噴射カーススプラッシュ

    <配下召喚><配下統率>

装備:歪んだ兜

   血染めマント

   怨嗟の剣

   錆びた盾

備考:なし

-----------------------------------------



 ライトが読み取ったステータスは、とてもではないが楽に戦えるものではなかった。


「皆さん、行きますよ! イルミ、スケルトンを任せます! メイリンはそのフォローです! 私がデスナイトを抑えますから、ヒルダがヒット&アウェイで攻撃です! ライト君、後方から全体指示を任せます!」


「「「「了解!」」」」


 パーティーメンバーの返事を聞くと、ジェシカは左側から回り込むようにしてデスナイトに向かって駆け出した。


 その一方で、イルミはスケルトン達の注意を引くべく、派手に攻撃を始めた。


「お姉ちゃんが強いところ、ライトに見せてあげるよ! 【突撃正拳ブリッツストレート】」


 一番近くにいたスケルトンの胴体に向かってイルミは正拳をお見舞いした。


 すると、【聖付与ホーリーエンチャント】の効果もあって普段よりも攻撃の通りが良く、殴られたスケルトンは体の骨を折られると同時に後ろにいたスケルトンも巻き込んで吹き飛ばされた。


「イルミ、強くなった。負けない。【岩棘ロックソーン】」


 イルミに張り合うようにして、メイリンもスケルトンの集団の足元からいくつもの岩の棘を出現させて敵の骨を砕いた。


「では、私もやりましょうか。【斬撃スラッシュ】」


 気合を入れたジェシカだったが、その斬撃をデスナイトの盾で防がれた。


「防がれましたか。ですが、盾に傷がつきましたね。これは、【聖付与ホーリーエンチャント】の影響ですかね」


 ジェシカは攻撃を防がれたが、全く通用していない訳ではないとわかるとデスナイトの背後に回っているヒルダの動きがバレないように【斬撃スラッシュ】を重ねた。


 ヒルダがその隙に背後に回って攻撃に移った。


「【十字刃クロスブレード】」


 デスナイトの死角からヒルダの十字に斬る攻撃がデスナイトの右脚後方に命中した。


 斬り飛ばすことはできなかったが、デスナイトの体勢が崩れた。


「【斬撃巣スラッシュネスト】」


 ヒルダが作ったチャンスを無駄にすることなく、ジェシカはデスナイトの胴体に斬撃を連続で浴びせた。


 それらは命中したが、デスナイトを後ろにひっくり返すまでは至らなかった。


 デスナイト戦はまだまだ始まったばかりである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る