第4話 あれ、いつもの天井じゃない?
厳しくなったルクスリアのトレーニングに耐え、ライトは5歳になった。
そのおかげでライトは【
残念ながら、まだ【
それでも、ルクスリアの許可が下りたので今日、ライトはエリザベスの治療に本腰を入れることになった。
2年前に初めてエリザベスに【
そうすることにより、ライトは【
【
だから、ライトは【
コンコン。
「母様、ライトです」
「どうぞ」
「失礼します」
入室の許可が下りると、ライトは静かにエリザベスの部屋へと入った。
エリザベスはベッドで下半身に布団をかけてはいるものの、上体を起こして本を読んでいた。
「母様、寝てなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。ライトのおかげで以前よりも体調は落ち着いてるもの」
「それなら良いんですが」
「私が自分の体について言うことを疑うのかしら?」
「母様は辛くないふりをします。それがわかってますから、僕は心配なんです」
エリザベスは強い女性だったので、辛くても涼しい顔で耐えてしまうのだ。
そんな姿を見ていられないからこそ、ライトは必死に今日まで鍛錬に耐えて来た。
「あらあら。でも、お医者様も最近落ち着いて来たって言って下さるのよ?」
「僕が昨日までやって来たことはあくまでも対症療法です」
「対症療法?」
「熱があるから冷やすというように、とりあえず目の前の症状をどうにかする手法のことです。僕が母様にして来たのは、まさにそれです」
「まあ、ライトはそんな難しい言葉を知ってるのね。5歳なのに賢いわ」
目を丸くしたエリザベスはライトの頭を撫でた。
ライトは照れて赤くなった。
「べ、別にそれは今は良いのです。お医者様の薬でも母様の症状の悪化を遅らせるのが限界でした。それを僕がどうにか症状を進行しないところまで持って行っただけで、治ってないんですよ」
「・・・そうね。本当にあのアンデッドを恨むわ」
エリザベスの病気は彼女がまだアンデッドと戦っていた頃に受けた傷が原因だった。
いや、正確にはエリザベスの病気に限らない。
ニブルヘイムの全ての病気というものはアンデッドが振り撒いているのだ。
結界に覆われている教皇領以外では、街から出ると度々アンデッドが出現してその勢力を増やしつつ、結界の中にある世界樹に取り付いて腐らせようとしている。
それを守るために人類は武器を取り、今もアンデッドと戦っていた。
街の外でアンデッドと戦って倒す。
それは人類のためになることだが、街の中に入る前に体を綺麗にする必要がある。
そうしないと、アンデッドの残滓たる瘴気がアンデッドと戦った者の体に付着したまま、結界内に入り込んで耐久力の弱い者から病気に罹ってしまうのだ。
エリザベスはライトを産んだ後の復帰戦で強いと言われていたアンデッドをパーシーやその他の仲間と一緒に討伐した。
しかし、その際に受けた攻撃のせいで徐々に体を病気に蝕まれてしまった。
それが原因でエリザベスは戦線から離脱した。
ダーイン家からはパーシーが今も結界の外で戦っているが、エリザベスは戦えない。
それは公爵家として由々しき状態なのだが、無い袖は振れないのだ。
だが、ライトは今日、エリザベスの病気の根治を狙った治療を行う。
エリザベスが戦場に復帰できるとは思っていないが、それでも日常生活を支障なく過ごせるようにしたい。
そんな気持ちを込めて毎日の鍛錬の成果をぶつける。
「母様、眉間に皴が寄ってます。力を抜いて下さい。今日は少し強力なのを使いますから」
「ごめんなさい。それにしても強力なの?」
「ええ。強力なやつです。やって構いませんか?」
「やってちょうだい」
エリザベスが頷くと、ライトはエリザベスの肩に手をかざした。
「【
エリザベスの体が光に包み込まれた。
その光は【
光が収まると、エリザベスは体を軽く動かした。
普段ならばもっと重いのだが、今日はそんな重さが全く感じられなかった。
「嘘・・・」
「母様、どうされましたか?」
「今までの靄みたいな感覚が、すっかりなくなったわ」
「ちょっと待っててください。診てみます」
エリザベスが嬉しそうに言うので、ライトは<鑑定>を発動した。
-----------------------------------------
名前:エリザベス=ダーイン 種族:人間
年齢:28 性別:女 Lv:55
-----------------------------------------
HP:550/550
MP:750/750
STR:400(-200)
VIT:400(-200)
DEX:600
AGI:700(-200)
INT:750
LUK:450
-----------------------------------------
称号:ダーイン公爵夫人
移動砲台
二つ名:
職業:
スキル:<火魔法><MP消費半減><MP回復速度上昇>
装備:なし
備考:なし
-----------------------------------------
エリザベスの備考欄には病気の表示がなくなっていた。
病気のせいで能力値が一時的に落ちてはいるが、それは些細なことだ。
肝心なのは病気の表示がなくなったことなのだから、とにかく今はそれを祝うべきだろう。
「母様! 治りました! 根治です!」
「本当? ああ、ライト! ありがとう!」
エリザベスに抱き着いたライトだったが、完全に治ったと知ったエリザベスに思いっきり抱き着かれて掴まってしまった。
「むぐぐ」
「ありがとう! ライト、ありがとう!」
ライトの呼吸ができなくなるぐらいギュッと抱きしめるものだから、ライトは気が遠くなるのを感じた。
ガタン。
「どうしたんだ!?」
そこに、パーシーが慌てて部屋の中に入って来た。
エリザベスの様子を見に行こうとしたら、部屋からエリザベスの喜ぶ声が聞こえ、パーシーは気になって走って来たのである。
パーシーの外見は背の高いイケメン細マッチョである。
金髪碧眼なのはエリザベスと変わらないが、マッチョのせいで全く別のものに感じられる。
ちなみに、パーシーの職業は
それはさておき、パーシーが部屋に駆けこむと、元気になったエリザベスが自分の胸でライトを窒息死させそうになるぐらい抱き締めていたので、パーシーはライトの救助に入った。
「リジー、ライトが息できてない! ライトを解放しろ!」
「えっ、あっ!? ライト!? ライト!?」
ライトが解放された時には既に彼は白目を剥いており、気を失っていた。
その後、しばらくしてライトは目を覚ました。
「あれ、いつもの天井じゃない?」
「ライト、目が覚めたのね!」
「うぐっ」
目を覚ましたライトは再びエリザベスに思いっきり抱き締められて、呼吸ができなくなった。
しかし、今度はすぐに解放された。
「ぷはぁっ」
「ライト、ありがとう。体、すっかり良くなったわ」
ちゅっ。
エリザベスはお礼を言った後、ライトのおでこに軽く口づけした。
ライトはエリザベスに感謝されて満足そうに笑った。
「良かったです」
「そうだな。本当に良かった」
「あれ、父様? いつの間に?」
視界の外からパーシーの声が聞こえたため、ライトが声の聞こえた方向を見ると、パーシーが椅子に座っていたのが見えた。
「さっき来たんだ。エリザベスの部屋から元気そうな声が聞こえたから、何かと思ってね。まさかエリザベスの病気が治り、ライトが締め落とされてるとは思ってなかったけどね」
「もう、それは良いじゃない。嬉しくなってつい全力で抱き締めちゃったのよ」
「アハハ」
ムスッとした表情になったエリザベスを見て、ライトは苦笑いした。
「それよりもライト、エリザベス。君達は俺に隠し事をしてるね?」
真剣な表情になったパーシーがライトとエリザベスを順番に見たことで、2人の表情もすぐに引き締まった。
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