初対面の奴に大丈夫って言われて信じる方がアホなのだ

ズーと斜面を落下する昇降機と言う名の鉄の塊の上に居るラビー一行。


「貴女に命を預けるって言うのは物凄い不安ね」


アラモードがエレベーターガールに軽口を言う。


「私も乗っているので命懸けですよ、 真剣にやりますので安心して下さい」

「そう・・・でも物体のスピードを遅くするって凄い能力に思えるけど

何でこの仕事を選んだの?」

「いや、 この能力物凄いハズレ能力なんですよ・・・

この能力の適用範囲は私の体か着ている衣服が触れている物体だけなんです

生き物には通じないし、 物体にぶつかってからじゃないと能力は発揮出来ないから

戦闘に使えない、 かといって日常生活にも使えない

この昇降機位しか使い道がないんです」

「ふーん」

「・・・おいちょっと待て恐ろしい事に気が付いたぞ」


雷が震えながら言う。


「アンタの能力がゆっくりさせる能力ならば落ちた物を上に上げる事は出来ないんじゃないか?」

「出来ませんね」

「じゃあ俺達、 上に登れないんじゃあ・・・」

「それなら大丈夫です、 下には物を上に上昇させる能力を持つ亜人が居るので」

「それなら安心、 なのか?」

「何方にせよ人力だから不安しかないな」

「そもそも通常の昇降機ってどうやって動くの?」


読者諸賢も知っての通り現代のエレベーターは大体が電力で動く。

昔のエレベーターは人力で動き、 この世界のエレベーターも大体が人力なので

彼等は人の事を笑えない。


「人力だからこその利点もありますよ、 冥府の門に攻め込む者達は

私が居なければ降りられませんから攻められません」

「意外と重要ポジションなのか?」

「多分そこまで重要では無いかと・・・」

「何故?」

「待遇と給料があんまり良くない」

「それはお気の毒に」


昇降機は尚も下にゆっくりと落ちていく。


「ところで大体後どの位で下に着くんだ?」

「15時間位ですね」

「アンタが気を抜いて能力を解除したら我々死ぬぞ!?

そこまで持つのか!?」

「大丈夫です、 私も乗っているので命懸けですよ、 真剣にやりますので安心して下さい」

「安心できねぇ!!」

「万が一の場合は落下する前に上の方に飛んで逃げれば死にはしないので大丈夫です」

「真っ当な奴はそれを大丈夫と言えねぇ!!」

「私達は麻薬の製造を行っているんですよ? 真っ当な訳無いじゃ無いですか」


雷のツッコミに冷静に対応するエレベーターガールだった。

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