物は言いよう

赤い森を抜けて冥府の門に向かうラビー一行。

そして一行冥府の門から少し離れた窪地に辿り着いた。


「えーと、 確かこの辺に・・・あった」


ADが功名に隠された鉄の扉をノックする。

ガチャリ、 と鍵が開き中から球体の頭の亜人が現れた。


「球体・・・子供の亜人か・・・」

「小さいな」

「大きいでしょ」


亜人の子供は小さい、 まだ小学生よりも小さい背丈だったが

その背丈の半分程のナイフを持っていた。


「人間圏に移動する人々を連れて来た、 通してくれ」

「・・・・・」


亜人の子供はスッと道を開けた。

扉の中はまるでダンジョンの様だった。

ダンジョンの様な通路を抜けて一行が辿り着いたのは巨大な昇降機。

バスケットコート4つ分程の大きさである。

一行は勿論馬車迄乗れる。


「・・・ん? 斜め?」


ラビーは斜面に昇降機が乗っている事に困惑した。


「ここの昇降機は斜めなんですよ」

「へぇ・・・珍しいですね」

「珍しい? 人間圏に昇降機は沢山有るのか?」


盾の騎士が尋ねる。


「あ・・・それは・・・」


ラビーは完全に前世の話だったので言い淀む。


「沢山では無いですがありますぞ」


ゼロが代わりに答えた。


「主に貴族の屋敷や王城にですがね」

「公爵閣下、 王城には何回か行った事有りますが見た事無いですよ?」

「ウィノは騎士だからな、 見た事無いのは当然だ

王城の昇降機は主に本や食料を上階に送る為の物だから騎士はあまり意識しないだろうし

そもそもこんな巨大な昇降機は初めて見る」

「そうですか・・・つまりこれが動く、 と言う訳ですか?」

「昇降機自体知らなかったのか・・・まぁ動く、 んだろうな恐らく」

「凄い魔法ですねぇ」

「いや魔法じゃないですよ」


とことこと入る昇降機に入る頭がハンドルになったエレベーターガールの様な姿の亜人。


「初めまして御客様方、 当昇降機は私が能力で操作します」

「能力でこんな大きい物を操作するのか!?」


勲章の騎士は驚愕する。


「あぁ、 違います違います、 私の能力は物体のスピードを遅くする能力です」

「・・・・・うん? それでどうやって動かすんだ?」

「はーい!! それじゃあロックを解除してくださーい!!」


叫ぶエレベーターガール。

がちゃん、 と音がするとゴゴゴゴゴと昇降機が動き始める

徐々にスピードが上がって行く。


「あぁ・・・落下スピードを遅くするって事ね」

「昇降機じゃなく落下機じゃねぇか!!」

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