閑話 門

ビア帝国皇帝城ダンスホールのフライの自室。

コンコンコココンコンココン、 とノックされる。


「只今戻りました」

「おう」


ドアの外からラテアートが帰還報告をした。


「オブラートとフロートの遺体を回収して来ました」

「分かった、 ナガンに送っておいてくれ」

「分かりました」


ラテアートは固有魔法でその場から消えてダンスホールの地下にある地下迷宮を歩き

【ナガン室】のドアをコンコンコココンコンココンとノックする。


「ラテアート坊か、 入れ」

「失礼します」


ガチャ、 と扉を開くと机を並べて作業している大勢の魔道具技師達と

奥にキズミを付けてミイラ化した腕に細工をしている頭部の上半分が

まるで二段アイスの様に二重になっている男が居た。

彼はナガン、 元々はナガン兄弟と言う二人の魔道具技師で

フライが皇帝になる前からの部下だったがテロにより死にかけた為

自分達を素材に自立式人型魔道具ナガンを造り出し延命を図ったのだった。

今でも帝国内の魔道具の作成及びメンテナンスを担う部署は【ナガン室】と呼ばれている

ナガンに敬意を払うのと同時に何をしているか分からなくする為である。


「オブラートとフロートの死体です、 フロートは腐りかけていますが」


ナガンの前に荷物に入っていた二人の死体を出す。


「充分充分、 何方かの血は赤い森に撒いたかね?」

「オブラートの血を撒いておきました」

「よしよし、 これで【門】を作れる」


【門】とは魔道具の一種で二点を自由に行き来できる様にする

テレポーターの様な魔道具である。

ビア帝国内でも秘中の秘の魔道具であり、 存在を知る者は僅かである。

いざという時の切り札と言う側面も有るが、 問題は作成法である。

【門】の作り方は【門】の出入口の一つ

仮に出入口Aとする箇所で素材となる魔法使いを殺害し

出入口Bとする箇所で【門】として作り変える事で

【門】は作成される、 また出入口Aは本人に所縁が深い場所にも変更できるが

余りにも倫理的に問題が有る作成法の為に秘匿されている。


「ぱぱぱ、 と作り出してしまうよ、 これで赤い森にも【門】が開けるね」

「ラビー嬢は父陛下も気になっていましたし、 これで容易に会いに行けるでしょう」

「結構容易に会っている気もするけどなぁ・・・」

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