閑話 無力な彼等

ウェーサーカ法国を出国したウルとスノーは馬車に乗って

カラメル王国へ帰国の途に入り

現在ビア帝国とシクラメン合衆国の国境の街で足止めを喰らっている。


シクラメン合衆国に入国するには書類の申請を行わなければならない。

今回の場合は王国への移動なので通過申請書が必要になり

馬車を使っての移動になりますので馬車所持申請書も必要。

そして申請書の次は入国申請書も必要になる。

この3枚の書類は物凄い行列を並ばなければならず

更に3枚の申請書を書いて貰い尚且つ国境の入国審査を受けなければならない。


シクラメン合衆国からビア帝国に入国する際は更に厳しい条件がある。

身分を証明する為の身分照会の証明書の提出。

物品のリストを発行し、 持ち物証明書の提出。

更に関税までかかる。

人の出入りに関税がかかるのは明らかに変だがシクラメン合衆国からビア帝国に入る際には

関税がかかる規則になっている。

人を労働力として見て商品的価値を考えており、 ビア帝国の帝国市民の雇用を守る為という

考え方である。

割りを喰うのはシクラメン合衆国側から通過しようとするシクラメン合衆国民以外の人々である。


「なんでこんなに労力がかかるんだ・・・」


国境の街の宿屋で嘆くウル。


「シクラメンの犯罪率は高いからな・・・信用無いんだろ・・・」

「確かに・・・鍵付きの部屋が鍵無しの部屋の3倍近く高い宿泊費って異常だろ・・・」

「本当だよ・・・」


きゃあああああああああああああああああと叫び声が聞こえる。


「・・・まさか襲われている?」

「ウルは待っていたまえ、 私が対処する」

「大丈夫ですか?」

「安心しろ、 こう見えても暴漢の一人や二人、 何とか対処して見せる」


部屋から出るスノー。

そして直ぐに部屋に戻って鍵をかける。


「ど、 如何しました?」

「廊下に武装した男が少なくとも20人は居た」

「幾ら何でも酷過ぎるでしょ・・・」

「警備の概念・・・いや、 最早この宿屋自体が犯罪組織とグルになっているのだろう」

「許せない・・・」

「しかし、 我々では如何する事も出来ない」


拳から血が滲む程、 握り締めるスノーだった。


「・・・・・」


ウルは涙を流したのだった。


「僕達は何て無力なんだ・・・」

「あぁ・・・その通りだ・・・」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る