知名度とジャンルは質に影響しない

ラビーと料理人は食い入るように本を見入っている。


「中々に旨そうだ」

「そうですね」

「いや二人共何読んでいるんですか!!」


少年がツッコミを入れる。


「料理の本を見つけてね、 これが中々美味しそうで」

「仙台と言う街のウーシャン麺と言う料理の絵が本当に綺麗なんだよ」

「いや、 知らないけども・・・」

「これ作れる?」

「厳しいですね、 ナスの色合いを出すのが難しそう」

「いや二人共ちゃんと探して下さいよ・・・」


溜息を吐く少年。

少年は仕方なく一人で本を見て回っている。


「色んな本が有るけども・・・どれがどれだか分からないな・・・」


本のジャンルもバラバラである。


「一体如何すれば・・・あ、 小説家の先生」

「ん、 君か、 如何した?」


本を読んでいる小説家。


「何を読んでいるんですか?」

「世界の童話」

「童話・・・ですか・・・それよりも古代でぶ妖精文明の手掛かりをですね」

「いや、 これも調査さ」

「童話を読む事がですか?」

「その通りだ」

「良く分かりませんね、 童話とでぶ妖精が如何関係するのですか?」


小説家は本を閉じて少年に向き合った。


「君は裸の王様と言う童話を知って居るか?」

「露出狂ですか?」

「ヘンゼルとグレーテルは?」

「???」


首を傾げる少年。


「この本に載っている童話だ」

「そうですか・・・」

「私は文学には詳しい、 人間圏の作品も熟知している

当然童話にも目を通している、 そんな私が知らない作品と言う事はつまり

私が知らない超古代の作品だったのではないかと推測する」

「なるほど・・・」


感心する少年。


「しかし中々に良く出来た話だ、 感心する

特にこのアンデルセンと言う作家の童話には脱帽だ」

「先生がそこまで言うとは・・・」

「読むか?」

「い、 いえ、 良いですよ童話なんて子供っぽい」

「ジャンルで区切るのは馬鹿らしい話だ、 君、 私の作品を読んだ事があるか?」

「いえ・・・すみません」

「私の処女作はエロ小説だった」

「え、 エロ・・・」

「今少し見下したか?」

「い、 いえ・・・」


ぱたん、 と本を閉じる小説家。


「作品のジャンルと作品の質は別問題だ、 そうだろう?

私は小説を書くのが仕事で小説を読むのも好きだ

恋愛小説なんかも読む」

「意外ですね・・・」

「これが子供向け作品だから、 と斜に構えて楽しめないのは勿体ないからな」


世界の童話を差し出す小説家、 そして少年が世界の童話を読み始めた。


「ほら穴のかみさんと悪魔と言うのが一番面白いぞ」

「何ですかそのタイトル・・・」

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