逃走(タコ娘side)

「これはアカンな・・・」


タコ娘が半魚人達の本隊に戻った時に口から出た言葉である。


「ギャアアアアアアアアアアアアア」

「グワアアアアアアアアアアアアアアアアア」

「ギイイイイイイイイイイイイイイイ」


半魚人達が絶叫を挙げている。

亜人達が一斉に攻撃を加えているのだ。


「他のエリートも・・・うわ、 蟹も亀も、 ウツボまで・・・

やられまくってるじゃん・・・赤潮でもここまで酷い事にはならないでしょ・・・」


優秀な半魚人達と言えども何百年の長き年月を生きている高位の亜人達の攻撃の前には

正にまな板の上の魚である。


「うっ!!?」


タコ娘は異常を感じた。

川に毒が流れている、 俗に言う根流しである。

ダイナマイト漁の様に荒っぽい漁法の一つである。


「くっ、 これは・・・ヤバい!!」


タコ娘は川から上がった。

川沿いには亜人達がお待ちしておりましたとばかりに大挙していたが

タコ娘は自慢の身体能力で何とか振り切って逃げた。

林の中に逃げ込めたが・・・


「はぁ・・・はぁ・・・」


水中よりも体は軽く速く動けるが、 長時間水の外に出る訳には行かない。

しかし水中には戻れない。


「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

「ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」


半魚人達の絶命の叫びが聞こえる。


「糞・・・何としても生き延びてやる・・・

雑魚共と私は違う・・・違うんだ・・・」

「助けてやろうか?」

「!?」


タコ娘が周囲を見渡す、 しかし周囲には誰も居ない。


「あ、 僕は姿を隠している、 見つけられないよ」

「・・・何者だ?」

「発明王の部下だ、 発明王が君に興味が有るらしい

ここから逃がす手伝いをしよう」

「発明王・・・・・何が狙いだ?」

「発明王に聞いてよ」

「・・・・・」


苦々しい顔をして頷くタコ娘。


「連れてけ」

「分かった」


タコ娘はしゅるしゅると一枚のプレパラートの中に納まった。


「さてと、 後は気が付かれずに帰るだけか」


半魚人達の絶叫を背に発明王の部下はその場を立ち去ったのだった。




大本営発表によると半魚人の群れは殲滅が完了した。

生き残った1%は川を下り人間圏に逃げ帰った。

亜人圏の奥に進もうとする半魚人は中心部に辿り着くまでに殲滅されるだろうと

推測されている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る