商談しましょ、 そうしましょ

ラビーとタコつぼ漁師の話し合いはラビーの元に冷燻する材料を持って行き

冷燻に仕上げた物を回収し代価として魚介類を提供すると言う事で話は付いた。


「では冷燻した物と同等の魚介類を提供するという事で如何でしょうか?」

「いや、 色を付けて貰いたいね、 冷燻は難しいから技術料と言う事で」

「ちゃっかりしているな・・・だがしかし、 聊か強欲では?」

「そうかしら?」

「えぇ、 こちらは貴方の所に態々材料を運んでいるんです

運ぶのにかかる労力は凄まじい、 しかも貴方は生きたまま魚介類を運べと言う」

「鮮度が大事だからね」

「それには同意するが、 こちらには水槽の亜人が居て運ぶのは簡単だが

それでも大変な事には変わりない、 その労力を買って頂きたい」

「それでも少し色を付けて欲しいですよ」


話し合いは平行線である。

互いに冷燻は喉から手が出る程、 欲しい。

漁師達にとって冷燻すれば価値は甘く見積もっても3倍以上に跳ね上がるとなれば

誰だって冷燻はしたがるだろう、 この付近では冷燻は不可能なので

外注してでも冷燻はしたい。

ラビーもスモークサーモンを始めとした冷燻した燻製は食べたい。


「ならばこちらも加工品を出しましょう」

「どういう事ですか?」

「冷燻は無理ですが、 こちらにも燻製や煮干し等

様々な魚介類を加工した物が有ります、 それ等を交渉材料に出します」

「・・・・・どんな物が有るか見る事は可能ですか?」

「現在は外来種の影響で作って居ませんが、 サンプルは有ります」

「では明日拝見しましょう、 今日はゆっくり休ませて貰います

尤も半魚人共が攻めて来なければ、 ですが」

「見張りは立てていますので何か有れば連絡が来ます、 大丈夫です」


こうして商談は終わったのだった。

タコつぼ漁師は部屋から立ち去り、 ラビーは寝間着に着替えてベッドに横になった。


「ふぅ・・・何だか市場で値切ったのを思い出したぁ・・・」


前世の記憶である。

そんな事を思いながらラビーは微睡の中に落ちて行った。

頭を使ったからかぐっすりと眠る事が出来た。

そして翌朝、 朝日を浴びて背伸びして起き上がった。


「んー・・・今日も言い朝ね・・・」


かん!! かん!! かーん!! と警鐘が鳴り響いた。

ラビーはすぐさま寝間着から私服に着替えて部屋の外に飛び出した。

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