ナイフとペペロンチーノ

「ふんふんふーん」


スパゲティを茹でるラビー。

かなり大量に茹でている、 今日は稀に見る空腹なのだ。

茹でている間に刻んだにんにくと唐辛子をオリーブオイルで炒める。

これもたっぷりと、 最早ダイエット等気にしない、 そんな鋼の意志で

大量にドガ喰いしたいのだ。

炒めているにんにくと唐辛子にパセリを加えて

パスタの茹で汁を入れる、 良く混ざり合った時に


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

食い物寄越せええええええええええええええええええええええ!!」


やや小柄の頭が球体の亜人が店に入って来た。

服装は貧相で手にはナイフを持っていた。


「・・・・・声が若いね、 子供かな?」

「馬鹿にするんじゃねぇ!! 殺されたいか!!」

「・・・・・」


ラビーは茹でていたスパゲッティとオリーブオイルを混ぜる。

味見をしてみると味は丁度良い。

アーリオ・オリオ・ペペロンチーノの出来上がりである。

俗に言うペペロンチーノである。


「おい、 聞いてるのか!?」

「聞いてるよ、 少し待ってなさい」


お持ち帰り用のパックにペペロンチーノを詰めて袋に入れて渡す。


「ほら」

「え・・・お、 おう・・・」


ナイフを持った子供は袋を受取った。


「あとそれから、 外に生っている赤い実を沢山集めて持って来れば

食べ物位はあげるからそういう事をするのは止めておきなさい、 これは没収」


ナイフを取り上げるラビー。


「あ、 おい!!」


両手でナイフをパン、 と叩く、 ナイフは融解した。


「・・・・・」

「ほら、 さっさと行きなさい」

「なんで・・・」

「うん?」

「ナイフなんか平気じゃねぇかアンタ・・・」

「刃物を怖がる料理人なんて居る訳無いじゃない」

「じゃあ・・・じゃあ何で俺に飯を持たせたんだ?」

「私は大人、 しかも料理人よ

お腹を空かせた子供を見過ごす大人且つ料理人が何処に居るのよ」

「・・・・・」


俯く子供。


「すまねぇ・・・」

「次来る時は沢山赤い実を持って来なさい、 ゴハンだったらあげるから」

「すまねぇ・・・」


頭を下げて子供は帰って行った。


「さてと・・・もう一度茹で直すかなぁ・・・」


もう一度大量のパスタを茹で始めるラビー。

腹が減って減って仕方の無い筈の彼女の顔は何処か晴れやかであった。

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