ラビーの実家にて(公爵家side)

「一体如何したもんか・・・」


ラビーの実父、 ゼロ・ストロングがこめかみを押さえて悩んでいた。

ラビーの身勝手な追放に悩んでいるのではない、 寧ろこの追放に対して

王家に恩を売れたと内心喜んでいた、 しかし問題はそれでは無い。


「あの・・・御当主様、 ヌガー子爵家がお見えです」

「またか・・・」


最近やって来る貴族達の挨拶である、 これを彼を悩ませている原因である。




事の発端は10日程前の事、 ラビーが追放されたと知り

その事実で如何やって王家に切り込むか、 と考えていた。

恩は売れたのだからこの恩を踏み台に成り上がろうと試みていたのだ

今の地位は公爵だが貴族達のあがりと目される宰相の地位

諦めかけていたその地位にも手が届こうとしている。


「ふふふ・・・」


自室でゼロは髭を撫でながら笑っていた。


「御当主様!! ハウス伯爵がお見えです!!」

「うん? ハウス?」


ゼロは執事の言葉に首を傾げた。

ハウス伯爵は勇猛果敢な騎士の家系として有名な家柄である。

実力主義過ぎて政争は苦手でイマイチ成り上がれない家柄が自分に何の用なのか?

そう首を傾げながらハウスの元にやって来た。


「侯爵閣下!! 此度の御息女の追放の件!! 私の家族一同皆嘆かれています!!」

「う、 うむ、 そうだな、 本当に青天の霹靂であった・・・」


ハウスとは仲が良くない筈なのだが一体なんだ? と首を傾げるゼロ。


「あー・・・ハウス伯爵? 私は最近忙しくて忘れっぽいのだよ」

「それはそれは!! 我が家に伝わる滋養強壮の薬膳をお持ちしましょう!!」

「いや、 結構、 ハウス伯爵と我が家はそんなに関りが無かった筈・・・

少なくともこうして個人的に挨拶をするのは初めてだと記憶するが・・・」

「はい!! 初めて家に上がらせて頂きました!!」

「そ、 そうか・・・それでは我が娘ラビーとはどの様な関係で・・・」

「ラビー様は外海の深海戦争において活躍した大英雄じゃないですか!!

彼女が居なければ我が家は愚かこの世界全てが破滅する程!!

そんな方が追放なんて・・・ありえない!!」

「え、 えぇ・・・」


外海の深海戦争は二年前に深海からやって来た深海人達と行われた戦争で

王国、 帝国、 公国、 法国、 共和国、 連邦、 合衆国の連合国家が

一同に会して戦った大戦争であった。

王国は主戦場にはならなかったがそれでも兵を出した。

その兵は志願制だったがその志願兵の中にラビーは居た。


「そ、 そんなに活躍したのか? ラビーは?」

「ラビー様は活躍の後の受勲を固辞されましたので王国でも知らない者が多いのですが

間違い無くラビー様が居なければ我々の勝利はあり得ませんでした!!」

「そ、 そうだったのか・・・」


なんだ、 ならば追放した恩はもっと高く売れると内心ほくそ笑むゼロ。


「公爵閣下!! 私が今日ここに来たのはラビー様の救出に向かう許可を頂きたいのです!!」

「な、 なに?」


咄嗟の事に呆けるゼロ。


「我が家の裁量では国外に当たる赤の森に向かう事は出来ませぬ!!

しかし貴方様が命じれば直ぐにでも向かいましょうぞ!!」

「・・・・・」


ゼロは考えた、 王家に追放されて恩を売ったんだから

勝手に動いたら売った恩がチャラになるじゃないか、 駄目だ、 迎えは無し!!


「君の気持ちは嬉しい、 だが赤の森に追放された我が娘が生きているとは思えない」

「そんな!! 直ぐにでも向かえば」

「分かってくれ!! 君達も犠牲にする訳には行かないんだ!!」

「っ・・・・・!!」


血がにじむ程拳を握るハウス。


「わがりました!!」


涙を流し歯を食いしばるハウス。


「ラビー様の敵討ちをなさるときはお声を下さい・・・」

「それは私に王を討てと? 謀略に取られたら如何する?」

「正義の為です!!」


そう言って立ち去るハウスであった。





そんな事が有った。

こんな感じでラビーを強く思う貴族の家々が次々とゼロの元にやって来る。


「公爵閣下!! 私は王家が許せません!! 家々が集まっています!!

今こそ王を打ち倒しましょうぞ!!」


最初の内のラビーの救護の許可、 その内に王家の打倒を掲げる。


「いや、 私は王になるつもりは無いから・・・」


自分が目指すは貴族のあがり、 宰相の地位。

流石に王になるつもりは無い、 王になった時の心労は考えるにも重すぎる・・・


「そんな!! 私は!!」

「気持ちは分かるが・・・」


こんなノリが何時まで続くのか? そもそも王に謀反の疑いアリとされて

殺されるんじゃないかと戦々恐々の日々である。


もういい加減にしてくれ!!

と叫びたいがそんな事も出来ない地位。


ヌガー子爵が帰った後に頭を抱えるゼロ。


「御当主様、 カヌレ男爵がお見えに」

「・・・・・」


心底うんざりするゼロであった。

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