あらら昨日の御客様?あららさっきの御客様?

ドラゴンの鱗がこんがりと揚がった匂いは赤い森中に広がった。

窓を開けて調理したからだ。

美味しい匂いに誘われてレストラン・スコヴィルに行っちゃおうかしら?

そんな事を考える野生動物は存在しない、 何故ならばレストラン・スコヴィルは

誇張無く魔導の究極の一形態の建物だからなのだ。

そんな場所に行く動物なんて殆ど居ない。

行くとすれば客だけだ。

ドラゴンの鱗を揚げて一夜経ち、 再び朝を迎えた。


「邪魔をするぞ」


やって来たのは顔が盾になった男。

盾に描かれたワイバーンが巧みである。


「あら、 昨日の騎士の方、 ですよね?」

「う、 うむ、 覚えていてくれたか」

「客商売ですので・・・」


前世では厨房で腕を振るっていたが

偶にオーナーシェフの奥さんと娘さんが不在の時は注文を取ったりもしていたので

客の顔と注文を覚えるのは当然の事だ。


「今日は・・・お仕事では無いのですか?」


昨日とは違い、 ラフな格好で来た盾の男。


「今日は非番でな、 とは言え暇だから来た」

「それは嬉しい限りですね・・・」

「昨日のドラゴン肉は如何している?」

「鱗を剥いで氷室で保存しています」

「氷室が有るのか?」

「魔法で出来ますので」

「うん?」


首を傾げる盾の男。


「如何しました?」

「そなたは炎の魔法使いだと思っていたが・・・違うのか?」

「あぁ、 私は炎も氷も使えるんですよ」


両手を広げて右手に炎、 左手に氷を造り出すラビー。


「ほぉ、 器用だなぁ・・・そんな魔法使いが居たのか・・・」

「本日のおすすめはドラゴンの鱗揚げですが如何します?」

「ドラゴンの鱗揚げ?」

「えぇ、 自家製の少し辛めのサルサソースが付きますが、 如何しますか?」

「ふむ、 ならばさっき買って来た野兎と交換だ」

「ありがとうございます」


既に揚げて有るので直ぐに提供するラビー。


「ふむ、 いただきます」


サクリ、 とワイバーンの口で咀嚼する盾の男。


「こ、 これは!!」


サルサソースを付けて一気にサクサクサクと食べ進める盾の男。


「っ!! っ!! っ!! (旨い!!)」

「ふふふ・・・」


美味しそうに食べる姿を見て微笑むラビー。


「はぁ・・・・・」


食べ終わりほんわりとする盾の男。


「お味は如何でしたか?」

「嫁に欲しい」

「お上手ですね」

「あ、 いや、 その・・・急にすまないな」


たどたどしくなる盾の男、 良く観察すると背丈は高校生位だろうか?

年齢もその位なのか?


「ま、 また来るよ!!」

「はい、 またのご来店をお待ちしていますー」


盾の男は慌てて外に出て行った。

気恥ずかしさも有ったかな。 とラビーは思いながらお茶を堪能した。


五時間後、 また来た。


「さっきのドラゴンの鱗揚げを3枚下さい!! 猪狩って来ました!!」

「あらあら・・・」

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