マコト①
朝は嫌い。
ふわふわの布団の中で身体全体がぽかぽかしていて気持ちいいのに、カーテンを引いても漏れてくるまぶしい光が、もう心地良い世界から出なきゃいけないと教えに来る。
夜はいつも、朝までだって起きられる気がしてなかなか眠れないのに、いつの間にか一瞬で朝になっている。
寝ている間の自分の時間は毎日、時間を食べる怪獣か何かに食べられてしまっているんじゃないか。バカバカしいと思いながらも半ば本気でそう思う。
朝だ。イヤだな。
今朝はそう思う暇も無かった。ユミが、話しかけてきたのだ。「おはよう」と。
何年前だろう、ユミと一緒にベッドで寝始めたのは。
最初の頃は毎日しっかり抱いて寝ていたし、頭をなでたり、一緒にお風呂に入って、ドライヤーでかわかしたりもした。それがずいぶん前から、一緒のベッドに寝ているとはいえ、ユミはただの空気か部屋の一部のような存在になっていた。
「まだこれ、夢なのかな」
トイレで座り頭を抱えながら、独り言が口をつく。
「朝ごはんできたよー。早くいらっしゃーい」
リビングから聞こえる声に、なぜかこれは現実なんだと感じた。
意味がわからないけれど、今日は大事な日、ユミなんかに邪魔されるわけにはいかない。
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