③
再び紺が巴を連れて武器屋を訪れると、新聞を読んでいた店主が口をあんぐりと開けて巴に視線を止めた。
少しして、紺をじろりと見つめる。
「…あんた、やるなぁ」
「どういうイミ」
目をすがめて、紺は同じように見つめ返した。
「いや、そんな別嬪さんどこでひっかけて…」
「そんなんじゃナイ」
キッパリと否定して、紺はため息をつく。
「このヒトは俺の旅仲間。恋人とかじゃ一切ないからカンチガイしないで。あと、ここにもう一回きたのは、このヒトも武器がみたいって言ったからダカラ」
「すみません、期待を裏切ってしまったようで」
やりとりを静観していた巴がにっこりと微笑んで言った。それに、店主はふむと一つうなずく。そして、じっくりと彼女を観察し始めた。
「獲物は?」
「主にナイフや懐刀などの小ぶりなものを使っています」
「ほぉう」
新聞を畳んで、立ち上がる。
「どういうのが欲しい?」
「軽くて、殺傷能力が高いものを」
「両手で使えるやつでいいな」
それに、彼女は少し驚いたように目を丸くしてうなずく。
「待ってな」
言い残し、奥に引っ込んでしまった店主に、巴はうなずいた。
「…私が両手で戦うって、どうしてわかったのかしら」
「さっき見てわかったんデショ。俺の時もそうだった」
「すごいわね」
感心したようにうなずく巴にうなずき返して、紺は笑う。
「ここの品揃えも、すごいと思わなイ?」
それに、彼女は周囲を見渡しながらうなずく。これだけのものを集めるのは、骨が折れただろう。
「持ってきたぞ」
店主が高級そうな桐の白い箱を手に戻ってきた。
それを手渡して、開けるように促す。巴がそっと蓋を開けた。
中に入っていたのは、二丁の拳銃だった。女性が持っても問題なさそうなほどの大きさで、試しに持ってみると驚くほど軽かった。
「弾は入ってるぜ」
「…ずいぶん軽いですね」
巴は過去に一度だけ拳銃を持ったことがあったが、その時は結構重みがあって自分には不向きだと思わされた記憶があるのだが。
「ちゃんと使えるか不安なら、あそこの的に撃ってみな」
親指で壁に掛けてある木製の的を示す。うなずいて、彼女は構えた。紺は銃には長い思い出があるので、少し複雑な心境になりつつもそれを見守る。
引き金を引くと、銃声特有の軽い音が響いた。
弾は的を見事に貫通している。どうやら、軽さにそぐわない威力を兼ねそろえているようだ。
「どうだ、気に入ったか」
「はい。これと弾丸を一式買います」
「毎度あり。知り合い価格で半額にしといてやる。全部込みで1円な」
財布から言われた額を取り出して、手渡す。弾丸と足に装着するタイプの拳銃ホルダーを箱の上にポンポンと置かれていく。
均衡が崩れて落ちそうになったところを、紺が押さえた。
「何個か持つヨ」
「ありがとう」
それに残りの道具を、店主は全て紺の腕の中に放り込んだ。
「よし、これで全部だ。大切に使ってやれよ」
「もちろんです。ありがとうございます」
にっこりと笑う巴に、店主は満足げにうなずく。そして、ちらりと紺を見て、ニヤリと笑う。
「尻にしかれるなよ?若造」
「…だから、そんなんじゃないッテバ…」
半分諦めたように肩を落とす紺に、巴はおかしそうに笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます