第33話 メスガキには屈しないぞ!

 紫と黒を混在させたような色のやけに布面積が少ない衣装。お腹は露出され、いや官能的な文様が踊っている。


 しかもスカート丈が超短い。俺の知っている沢渡はかなり長めの膝下まで伸びるスカートだったはず。


 それが今や破廉恥な風先輩の力を借りずとも、その、なんだ......あれです。全部見えそう。


「......!」

「あれれ〜先輩どうしたのかなぁ?」


 沢渡はスカートの裾を掴んでギリギリ見える見えないのラインで遊ぶように弄ぶ。めっちゃ動揺した!動揺した!


 あんなの動揺するに決まってんだろ!


 これは紛れもないサキュバスなのではないか。だってハート型の尻尾とか、角とか生えてるし。


 何よりなんか光がめっちゃかかってたからな。なにあれ、エクトプラズムとかそんなやつ? 知らんけど。


「さ、沢渡......なんだよな? 」


 絞り出すようにそんなことしか言えない俺を笑うなら笑ってくれ。色々と起きすぎてもう何が何だか分からんのよ。


 だが俺の質問に答える素振りを見せずに、沢渡はぴょんぴょんと飛び跳ねるようにベッドの上に座った。


 足を組みながら、空いている部分を叩き挑発的に笑みを浮かべる。


「話はベッドの上で......ね?」

「アギィ!?」

「ははは、先輩まさか年下にコーフンしてるの? きっもーい。それってロリコンって言うんだよ。せ・ん・ぱ・い?」


 ぐっ!!! このメスガキ!!! 今でなら思うぜ、数多の同人誌に登場する分からせおじさんの気持ちが!!!


 俺は意気揚々とベッドの上に座り込み、自身のできる最大最大級の、キメ顔で俺はそう言った。


「俺が分からせてやる、このメスガキ!」

「こんな可愛い美々に対してメスガキとかひっどーい。」


 挑発的に笑いながら沢渡は膝をポンポンと叩く。あ、耳かきの途中でしたね。完全に忘れてました。


 俺はすぐさま沢渡の膝の上に頭を乗っけたが、ここで気がつく。


 変身? する前はスカートだったが、今は隠す気が無いような素肌が露出している。耳にあたる生の肌の感触に、思わず息を飲んだ。


 すべすべであり、しっとりとした感触と確かな温かみ。体が反応する事を選びそうになるが寸前で俺は咄嗟に堪えた。


「我慢しなくても分かるんですけどぉ? サキュバスって、幸せな気分が分かるし〜?必死に我慢してる先輩ださーい」

「くっそぉ......」


 おのれサキュバスの能力。というか知ってはいたけど、知っていたからといってこれもう無理ゲーじゃん。


「うわぁ、先輩の耳垢ジャングルみたーい、きもーい」

「え、それその状態でも言うの? 」


 俺の返答には答えず、


 悶々となる気持ちを捨てるゴミ箱を探していると、ステンレス製の感触が耳にあたる。どうやら耳かきを始められたらしい。


「あ、意外と素直に耳かきされに来た先輩にご褒美」

「?」

「さっきの質問答えてあげるね? 私は沢渡美々本人。人格が入れ替わったりとか、他人の空似とかじゃない......よっ」

「ひゃいっ!」


 少し強引に耳垢を取られ、声が出てしまう。仕方ないだろ、強めに掻くことに慣れていないんだから。


 上ではケラケラと笑われる。でもすぐに、もう一度耳かきの感触が伝わった。


 今度は優しく、それでいて丁寧に耳垢を取るように。


「私、魔力が高まるとたまに変身しちゃうんだ。まだ魔力の制御が下手だってママに言われてね」

「うーん、あれか? テンション上がりすぎて変な感じになる的な?」

「意味わかんないけど、まぁその認識でいいよー」


 纏めるとサキュバスに変身したらメスガキ化するだけで、沢渡自身に違いないってこと?


 これって普段の沢渡に戻ったらとんでもない事になるのでは......。俺の考えとは裏腹に耳垢はどんどんティッシュへと吸い込まれていくようだ。


「コスコスコス......先輩......気持ち悪い顔してるぅ〜」

「うぐ、あ......くそ、あああ......」


 同じ所を早く掻かれ、快楽の波が体を貫く。そして傷がつかないように今度は違う裏側を掻いていく。


 ゆっくりとした動きから、早くしたもの。様々な攻め手が俺の体に快楽を運ぶ。その都度情けない声を出す俺を、なんともまぁ丁寧に煽ってくださるのだよ、こいつは。


「ふふ、先輩気持ち悪い声出してるー」

「くっ、出してなんか―」

「気持ちいいの? だっさーい」

「くそう、負けるもんか!」


 騒がしいような形で行われると思われるが、基本的に沢渡は耳元で甘く蕩けるような言い方をする。


 それに俺がうるさくない程度に声をあげて抵抗しているという訳だ。


「それじゃ〜あ〜、そろそろ奥やるね?先輩」

「はいぃ......」


 奥に行くまでの道中で散々からかわれ、とんでもなく快楽が身体に走ってる。それで、奥なんて行かれてしまったら、いったいオイラはどうなるんだい?


 今後に控えているであろうその耳かきの快楽が今は怖くて仕方ないっす。


「それじゃあ、いくよ?」

「.......」


 俺はもう瞳を閉じて、そのステンレスの感覚に身を委ねるしか無かった。






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