第3話 初めての魔物

 俺はサラの腕を引っ張りながら魔王城に向かって歩き出した。

 すると、城下街を出てすぐに、ぷよぷよした見た目の粘膜状の生き物と遭遇する。


「なんだあれは!? サラわかるか?」


「もう、強引に引っ張らないでよ! あー。あれはスライ……。」


 ここでサラは何かを言いかけて止まる。そしてニヤリと笑ってから、再び口を開くのだった。


「あれは魔王よっ! 今ここで倒して世界を救ってちょうだい。」


 サラが魔王スライムと言ったので、俺はぷよぷよした何かを凝視する。そして拳を強く握り、震える手を沈めさせる。

 暫く凝視していたが、魔王スライムは俺の方を向いてぷよぷよしているだけだった。

 一向に襲ってこないので、話せば分かってくれると思い、俺はそいつに語り始める。


「魔王よ。何故人間を襲い、この世界を支配しようとしているのだ? 出来れば話を聞きたい。」


「ぷよん、ぷよん。」


 俺は魔王スライムに話しかけたが、体をぷよぷよさせている音しか聞こえなかった。


「答えてくれないか……。仕方ない。魔王よ! 世界を救う為にお前を切る!!」


 俺は王様に渡された銅の剣を手に持ち、魔王スライムを切り裂いた。いや、切り裂けてしまった。


「え? 切り裂けた??」


 ぷよぷよした何かは光に包まれて消えていく。魔王スライムをあっさり倒せてしまった事に驚いていると、サラが後ろでクスクス笑っていた。


「うふふふ。アンタ本当にバカね。魔王っていうのは嘘よ。」


「サラ。何を言ってるのか分からないが、魔王は倒した。すぐに王様に報告しに行くぞ。」


 “八雲やくもは嘘を知らない“


 サラが後ろから訳のわからない事を言っていたが、魔王スライムを倒した事を王様に報告する為に、王国に戻る事をした。


「ちょっと! 嘘って言ってるじゃない。お父様に怒られるからっ!! ちょっと待ってよおぉ!」


 魔王スライムを討伐した俺たちは、城を出てから僅か20分程で帰宅した。

 そして王様であるランドロスに魔王スライムを倒した事を報告する。


「ランドロス王よ。魔王は倒した。さぁ元の世界に帰してくれ。」


「なんと!? ここを出てから、1時間足らずで魔王を倒してしまったのか!? ……サラ、本当なのか?」


 報告をするとランドロス王は、サラに真偽を確かめる。するとサラは首を振って違うと否定していた。


「サラ。お前が魔王って言ったんじゃないか。何が違うって言うんだ。」


「あーもう! ややこしくなるからアンタは黙ってて!!」


 サラに黙っていてと言われて仕方なく口を出すのをやめる。

 暫く王様とサラが会話をしていたが、王様はため息を吐いてからサラに言った。


「サラ。勇者は魔王を知らないんだ。紛らわしい言葉は使うんじゃない。」


「そうだけど……。私は倒した後にちゃんと説明したわよ! コイツがバカなのがいけないのよっ!!」


「良い加減にしないか! サラが原因で勇者に勘違をさせたんだろ!? ……勇者よ。此度は、私の娘が迷惑を掛けたな。すまないがもう一度だけ、魔王討伐に出向いてくれんか?」


 サラは王様に怒られて涙目になっていた。そして、サラを怒鳴った王様は俺に頭を下げて、もう一度だけ魔王の討伐をお願いしてくる。

 王様に頭を下げられて、断われる雰囲気じゃなく渋々了承した。

 そして涙目のサラと城を出て、再び旅に出るのだった。




ーーここから八雲とサラによる、本当の魔王討伐が始まる……はずーー




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