第15話見てしまったわ私

「ん?」


突然自分の管轄の土地に強大な魔力が四つ現れた。

魔力に敏感な精霊種のフレイムロードは休眠からめざめた。


「何事…?」

二つの魔力は分かる。自分と同じ『十二魔』のヴァンパイアロードと悪魔のモノだ。


「んん?」

残りの二つは十二魔とは桁違いだ。

二つとも『王』のランクだと思われる強大さ。


寝床の朽ちた遺跡から出て魔力の方角に遠見の魔法で観察する。



「やっぱり二人は十二魔、それに…魔将軍様!?」

元四天王のオールドドラゴン魔将軍。ドラゴンの頂点。それは『王』の格で間違いはない。


だがもう一人が問題だ。

三人はその一人と敵対している様だった。



勝てるわけ無い。フレイムロードは思った。

自分と同格が二人と『王』が一人。確かにもう一人も魔力は高い様だが、戦闘経験が違うだろう。もてあそんで終わり、そう思った。


「きっとオイタでもしたんでしょう」

教育的指導…そう思った。



だが覗き続けて居たらそれが間違いだと気づかされる。


「全員本気じゃないのよ…」

魔将軍含め三人は本性を現していて本気の魔力を込めている。

魔将軍のブレスに至っては砂地がガラスに変わるほど高温だったし、ヴァンパイアロードは肉体強化を使って止めにかかっている。


だがそれでも何者かは止まらない。


魔将軍に瞬足で近付き、聖剣でも傷付くかどうかの鱗を弾き飛ばしている。それも拳で。


悪魔は多足をもって立ち回り、補助魔法で砂嵐を起こしたり黒焦げのヴァンパイアロードを回復したりしている。



「え?」

何者かの魔力が瞬間『王』を上回った。

そして魔将軍の翼に炎の連弾を放つ。

それも一撃一撃が必殺レベルの魔力だ。



「うそ…王を越えるなんて…」

『王』を超える存在。

それは未だ空位である『魔王』の資格有りと言うこと。


連弾で炎に耐性のある筈の魔将軍の翼がどんどん千切れ飛んでいく…


「うそうそうそ」

理解が追い付かない。あんなにも魔力を使っているのに勢いが衰えないなんて…!



魔将軍の翼の影からヴァンパイアロードがありったけの支援を乗せられて飛び出す。

その早さは遠見の魔法で追いきれない程の早さだった。


ヴァンパイアロードお得意の『ドレイン』だ。

連弾を放つのに集中していたからかクリーンヒットする。


「よし!勝った!」

フレイムロードはガッツポーズをとる。

だが最後に放たれた連弾によって魔将軍の片翼は骨を露に無惨に弾けた。



『ドレイン』によって何者かは魔力を弱めて行く。それでも『王』並みの魔力を維持したままだ。



悪魔が治癒の魔法を魔将軍にかける。格上の相手に効きづらいのが欠点だが、魔将軍が治癒の魔法を受け入れているので比較的早く傷は癒えていく。



何者かの魔力が『十二魔』並みに落ち着いた段階でヴァンパイアロードが『ドレイン』を解いた。吸いきれなかったのだろう。



「三人がかりでこれってヤバくない?」

自分も挨拶がてら様子を見ようかと思っているうちに『転移』の魔法で四人は消えた。



「ちょっとちょっと…荒らすだけ荒らして終わり?」

自分の領地が灼熱に焼かれて荒れ果てている。

これを癒すのにどれだけの魔力が必要か…


幸い転移先は魔力を追えば辿り着ける。



「文句を言う権利は我に有り!」

フレイムロードは四人を追って転移した。

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