第5話
ソライに流れ込んできた映像。
瓦解した城から脱出し、燃ゆる森で逃げ場を失ったとき、現れたのは一人の緑鹿兵――まだ軍人として銃を片手に駆けていたころのソライ自身だった。
「助けて。いったい、何が起こっているの?」
息も絶え絶えすがりつく少年は、相手が森に火を放った張本人であることも判断できぬほどに混乱し、涙を流していた。
ソライは冷酷に狼姿の少年を銃で突き飛ばし、銃口をその小さな頭に向けた。
「うるさい。少年。おまえはここで死ぬのだ!」
「いやだ、いやだ! 僕は、まだ誰の役にも立っていない! せめて、戦ってから、戦ってから!」
「黙れ!」
ソライは少年から的を外し、銃の引き金を引いた。
銃声とともに弾は燃えさかる樹木に命中した。
倒れる、炎の樹。
ソライは素早く身を翻し、軍服の鎧に火の粉が飛ぶ程度で済んだ。だが逃げ遅れた少年はそのまま樹木の下敷きとなった。さほど巨大な樹木ではなかったため、身体能力の高い白狼は抜け出すことができたが、真っ白な毛皮に炎が燃え移り、たちまちのうちに火だるまと化した。
「熱い、熱い、熱い!」
白狼は飛び回り、号哭する。
だが、救いの手はなく、共にいたソライもやがて踵を返し走り去ってしまった。
視界が真っ黒になったところで、少年の記憶は途絶えた。
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