第11話 近衛騎士団見学。

騎士団に所属する者は朝と昼に3時間ずつ、計6時間を己の強化に当てている。

1に鍛錬、2に鍛錬、と研鑽を重ね続けている訳だ。

継続は力なりというし。素晴らしい事だ――――



こんなに早起きさせられなければもっと素晴らしい。


眠気でぽやぽやする頭を振りつつ、騎士団の鍛錬場まで向かう。


鍛錬場と言っても、4つの騎士団全てが一箇所で鍛錬をする訳じゃないらしい。


――――1箇所だと思ってた。よく考えれば物凄い人数になっちゃうか…気付かなかった。



慰問というか見学というか、そういう形で訪問するけど、実質私の護衛の選定も兼ねていたので…


私としては個人的に、魔法剣士何ていうファンタジー感ある青の騎士団を見に行きたかったけれど、

本日は近衛騎士団しか許されない。


護衛選定も兼ねてるから。アンナが許しませんっ。


近衛騎士団は選び抜かれた見目麗しいイケメン揃いらしいから、文句は言うまい。



朝の鍛錬時間の方がギャラリーが少ないという事で、朝の鍛錬場を見学になった。

人も少なければ守りやすく、姫が見に来るという混乱も招きづらいとのこと。


―――…姫、お披露目まだだし気付かれないんじゃないかな…と思ったのは内緒。


近衛騎士団から2名護衛にお借りした。

前回の自己紹介してくれた騎士のカルヴィンさんと、バーニー・ハックさんという騎士さんだ。


その二人の護衛と、私とアンナと3人娘の7人で城の敷地内に作られている鍛錬場に向かった。



連れて来られたのは、鍛錬場っていうより……



闘技場じゃないの!?っていう所だった。


外面だけでも巨大なコロシアムみたいな建物へ連れて来られた。


ローマ帝国のシンボルでコロシアムではなくコロッセオって呼ばれてたんだっけな…

コロシアムの語源がコロッセオなんだっけ??

建物に近付きながら、どこかで聞いたような知識をぽやっと思い出す。


――――ローマ帝国の緊縮政策を取りながらも市民を懐柔するための娯楽施設の目玉として、

円形闘技場の建設が検討され、ウェスパシアヌス帝のもと開始された。



こちらの世界では騎士団の鍛錬場になってるみたいだけど。




六階建てくらいの高さの建物は、大きな楕円形だ。

近くで見るとコロシアムそのまんまというより、形が似てる感じだね?

コロッセオからインスピレーションを受けて、建ててみた感じの。


コロッセオの特徴的な80箇所もあるアーチ部分を、この建物では正面のひとつが入り口になっていて、

他の部分は少し小さくなり、窓になっている。

ほおお!と感嘆したのは最初だけで…


――――夏になったら暑そう……


と、思っていた。



騎士の後を着いて行く。前にカルヴィンさんで後ろがバーニーさんで進む。

私達を縦に挟む感じで進んだ。


そして、正面玄関っぽいとこにそのまま入って行く。

そこには、警備兵みたいな人が立っていた。


そこで入館許可証を提示して確認して貰い、さらに奥へと歩いて行く。


薄暗く長い通路を歩いて行くと光が射す場所に出たら、そこは本当にコロシアムだった。

よく映画とかに出て来るタイプの。


この中の中心は円形だ。


それを囲む様に安全防止の為か金網が張り巡らしてある。

金網の外側ではぐるっと囲むように観覧席がズラリと並んで配置されていた。



そして、金網の内側でかなりの人数が規則正しいリズムで剣を振っていた。


その統制の取れた動きはまさに圧巻の一言だった。




カルヴィンさんが「素振り止め!!!!!!!」と叫ぶと、皆ピタリと動きを止め剣を下ろす。


「本日は、姫様が近衛騎士団を見学しにいらっしゃった!!」


カルヴィンさんがまた大小声で騎士達に説明をする。


「姫様に敬礼!!」


ザッ!と音がして、皆こちらに身体を向けた。

そして同じ所作で左手を胸に手を当て、頭を下げられる。

総勢100人くらいの麗しい騎士に一斉にされると、圧巻である。



――――は、恥ずかしい……

圧巻だけど、ちょっとした公開処刑されてる気分になる。



「本日は、姫の護衛選定も兼ねている。選出される事は名誉な事だ。姫に選んで貰えるよう、

いつもより更に高みを目指すつもりで、鍛錬に励め!以上、戻れ!」



「「「「「ハッ!御意!」」」」」



揃った声で返事をすると、また剣を構え素振りを始めた騎士達。



――――え、選びづらー…


チラリとアンナを見るとアンナも私を見ていた。


「どの方達も素晴らしいですね。姫様が気に入った方で大丈夫ですよ。

鍛錬を見学しながらゆっくりじっくり選びましょうね。」


私はコクリと頷き、じっくりと見学する事にして、鍛錬している騎士達を見つめた。


――――後で3人娘に誰がカッコよかったか聞こうっと。


脳内は相変わらずである。

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