#02 温かい言葉
ピア〔仲間〕がいるからこそ問題は無事解決できるのじゃ。
それにな。余裕の範囲内でしか行わない善行は、一見、合理的で理に適っているようにも見える。ただし。貧乏で一切れのパンしか持っていない人間が他人を助ける為にあげてしまうパンと唸るほどの大金を持っている人間が施す千円の重さは……、
一体、どちらの方が重いのだと思う?
そうだ。やもめのレプタの訓話じゃ。
うむ。本質は銭金の問題ではないと分かるな。他人を助ける為に発揮する己が持つ力をどう使うべきかの話じゃ。ゆえに後先を考えず、助けたいと飛び出したイタコ殿を見て、ワシは思った。これこそが、真の強さであり、真の優しさなのだとな。
晴夜の眉尻が微かに震えて下がり、きつく固く目を閉じる。
……だから、わたくしは、もうなにも聞きたくないのです。
両耳を両手で抑えて、がぶりを振る。
……うむ。聞かずともよい。今はまだ分からなくともよい。
だがな。
お主にも分かる時がくる。ピアの大切さや真の強さというものが分かる時がくるのじゃ。だからこそ今回はヤツにお主を任せた。ヤツであればお主を正しい道へと導いてくれると信じてヤツに任せたのじゃ。無論、ワシではお主が甘えるからな。
それにな。ヤツは、悪霊に喰われた自分がワシやお主を襲った事を悔いておった。
だからこそ、ヤツの方から、晴夜の事は自分に任せてくれとさえ言ってくれたよ。
ヤツはワシの掛け買いのないピアよ。
お主にもそういう人間が現れる日をワシも心のそこから祈っておるよ。
そしてワシは待っておる。
いつまでも天国で待っておる。再会できる事を楽しみに見守っておるよ。ピアを得て真の力の意味を知ったお主との再会を待ちわびておる。だからこそ、今は、また、しばしの別れじゃ。ただし、またお主が道を踏み外しそうになったならば。
……今度は、ワシ自身が、きついお灸を据えるぞ。そう心得よ。晴夜。
フフフ。
そうじゃな。ワシと再会したいが為にわざと道を外したように見せるなよ。そんな事をしても無駄じゃ。お主の心などコールドリーディングを使わずとも見えるのだからな。だから、今は学んで来い。イタコ殿と同じ時を過ごして成長せよ。晴夜。
ではまたな。さらばじゃ。
そうして優しくも懐かしい声は消え去る。一粒の雫を遺し。
丸まっていた晴夜の瞳からも一滴の涙が静かに零れ落ちる。
お祖父様、わたくしは、一体、どこで間違ってしまったのでしょうか?
お祖父様の足を引っ張り、死なせてしまったと考えた時点で間違っていたのでしょうか。いや、もっと、その前から、お祖父様の強さに憧れていたわたくしが、お祖父様のように強くなりたいと考えてしまった時からでしょうか。あの時……、
強くなりたい。強ければお祖父様のようになれると思った時からなのでしょうか?
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