#10 決着
ボロボロになって、立つ事もままならない晴夜が呻く。
哀しき思いを吐露する。
違うのです。違うッ!!
力を使い果たし、薄れゆく意識の中で、必死に是威だと思われる霊に語りかける。
わたくしが弱かったから、お祖父様の足を引っ張り、お祖父様を死なせてしまったのです。だから自身に力がなければ何もできないと考えたのです。だからこそ一人で、なにもかもを解決できる力が欲しかったのです。ただ、それだけなのです。
お祖父様を死なせてしまった自分が憎くて殺したくて。
本当に、ただ、それだけなのです。それだけなのです。
と青い眼鏡の端から零れ落ちる一粒の涙。
後悔という名を持つ雫。
ぽたりぽたりと落ちる。
虚空の中、ただ一人、泣きじゃくる子供に戻ってしまった晴夜に優しく答える霊。
その瞳は、愛しきものを慈しむ目となる。
馬鹿者め。それが奢りだと言ったはずだ。
是威殿もお主に足を引っ張られたとは思ってはおらん。
我らメル派の教義を忘れたか。メル派の神父がエクソシズムやエクソリズムという悪霊を祓う力を得るのは何故だ。その意味を忘れたか。思い出せ。我らが力を得るのは力なきものを守る為。真の意味での悪霊から弱き者を守る為に力を得るのだ。
ちょうど是威殿が悪霊に喰われてしまったワシを解き放ちお主を救ったようにな。
とめどなく溢れる涙を止められない晴夜が驚き戸惑う。
えっ? あなたは……。
と、そこで晴夜の意識は途切れる。意識が途切れるのと同時にイタコと晴夜の喧嘩も幕を閉じた。数多の霊達の協力によって何とかにでもイタコが勝利したわけだ。そして力こそ正義だと固く信じていた晴夜の心も、ようやく溶けて解れていった。
唯々、慈しみ深くも温かいピア達の心によって、過ちが霧散して消え去ったのだ。
力とは正義ではなく、弱きものを守る為にあるのだと。
そして、
ピア〔仲間〕の協力から力を得て、ピア〔仲間〕を守る為に力はあるのだと……。
「なんて言うと思った?」
全てをぶち壊すイタコ。
ここからは、いわゆるイタコ流カーテンコールだわさ。
あたしはね。あの馬鹿ちんに死ぬほどボロボロにされたんだ。口惜しいんだわさ。
血反吐を吐かされて本当にもう死ぬのかって思ってさ。死も覚悟したんだわさッ。
これが復讐せずにいられるかっての。結局、南極、きゃっつの弱点を発見できなかったけど絶対に弱点を発見して追い詰めてやる。ククク。その時が今から待ち遠しいわさ。遠距離恋愛をしてる恋人同士が七夕デートを待ちわびるみたいにね。
彦星カムバックな織姫の心なんだわさッ!
あ、もちろん恋人同士じゃないわさ。仇敵よ。仇敵ッ!
ぶっ殺すッ!
などとイタコが最後に叫んだとか、叫ばなかったとか。
……トホホ。
あ、それから、もう一つだけ言っておくわさ。まだ、このお話、続くからねッ!!
嫌だと言っても、もう少しだけ続くんだわさ。あたしが晴夜を懲らしめるまでね。
よろしくッ!
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