#09 無間地獄
四人と一人でもそうなのだ。数多の霊達が三体の仏を超える事もまた夢ではない。
ゆえに多くの霊に後押しされるイタコが晴夜の力を凌駕し始めたのは必然となる。
力が押し戻され始めて、
焦りが止められるない晴夜は、限界を超え、三体の仏の力を絞り出そうと試みる。
あらんばかりの力を振り絞り、仏を酷使して引き出す。
「あり得ない。あり得ないッ!! わたくしの力を否定するものが、この世にあるなどとは信じられない。神がわたくしを見放したとでも言うつもりなのですかッ!!」
不動明王や千手観音、そして馬頭観音を強制的に執行していた力が徐々に弱まる。
限界以上の力を引き出そうと自身の霊力を仏の力執行に振り向けた為、霊力が削られて、すり減ってしまったのだ。力で行使していたがゆえ、力が弱まると、三体の仏が自由にもなる。すると当然ながら押さえつけられていた仏の怒りが心頭になる。
……小さく儚き人間よ。
この時が来るのを予想できなかったのか?
三体の仏の内、一番、冷静に話せるであろう千手観音が晴夜に厳かに語りかける。
「ちくしょう。仏のやつが、わたくしの支配下から逃れやがった。ちくしょうッ!」
遂に丁寧な口調すらも崩れてしまう晴夜。
そうして三体の仏は、お互いを見つめてから頷き合う。
そののちイタコの体へと憑依する事をお互い示し合う。
限界以上の力を使い果たし、霊力が残り少ない地蔵菩薩へと力を貸す事を決めたのだ。彼らは即座にイタコへと憑依する。その瞬間、まるでフラッシュをたいたように辺り一面が、まばゆい光に包まれる。一気にイタコのエネルギー体が膨張したのだ。
「あり得ない。あり得ない。あり得ないッ」
晴夜は同じ文言しか繰り返せないでいる。
温かい霊力が彼を包んでから吹き飛ばす。
巨大な力の渦に飲みまれてしまい体が引き千切られるような痛みに襲われる晴夜。
仏を甘く見た、お主にはきついお仕置きが必要じゃな。
未来永劫、無間地獄を彷徨い歩くがよい。
しかし、そこでイタコがエクソシズムを放つのを止めてしまう。もう充分だと地蔵菩薩を含む四体の仏に慈悲を乞う。そして協力してくれた仲間にも慈悲を乞う。もう充分だわさ。やつも反省したわさ。後悔しているわさ。許してやろうよ。
と、だ。
今回、一番、酷い目にあったイタコがそう言ったのだ。
イタコに協力していた皆は静かに頷き晴夜を解放した。
そして。
あの語らなかった霊が、ゆっくりと厳かに語りかける。
……晴夜。愚か者めが。
お主は一人の力で、なにもかもが解決できると考えた。
その結果が、これじゃ。
自分を鍛え、自分の力を過信して力こそ正義と曲解してどうなった? 人間は一人では解決できない問題も沢山ある。否。一人の力では何も解決できぬ。人はピア〔仲間〕がいてこそ人として問題を解決する力を得る。それこそが真の力と心得よ。
その為に、ピアが在る。
そして、
力が必要な意味なのだ。
仲間を守る為。仲間を助ける為の力がな。そう心得よ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます