#07 集まる
…――イタコちゃんには助けられたんだから私もイタコちゃんを助けるんだッ!!
絶対に負けないで。イタコちゃん。私も憑いているからッ。憑いてるからさッ!!
コスモスの花飾りが、眩いばかりの光を放ち輝き出す。
輝きは涙が零れる時、光るソレにも似た純粋なる輝き。
遅れて、ごめんねッ!?
そう。名作を遺したいという未練を持っていた、イタコに成仏させてもらった、あの少女の霊だ。コスモスの花飾りの持ち主であった少女の霊。イタコのピンチに駆けつけたのだ。そして、決然とした瞳で晴夜を睨み付ける。イタコへと憑依する。
「イタコちゃん、遅くなってごめんね。でも安心して。私が、みんなに話を通しておいたから。もうすぐ、みんなも駆けつけると思うわ。だから大丈夫、安心して」
どうやら少女の霊は自分が助けにくるのと同時に、他にも声をかけていたようだ。
話をつける為に駆けつけるのが少々遅れたのであろう。
コスモスの輝きに呼応して数多の声なき声が天から降り注ぐ。地から湧き上がる。
「予想はしてたけど、こんなにも来る? マジかいやッ」
集まった霊達の多さに驚きを隠せずに、ビビるイタコ。
……膨大な霊気がイタコに向かっておるぞ。お主の言う勝機とはこれだったのか。
地蔵菩薩も、また驚く。
どんどんと集まってくる声なき声の小さくも弱い霊達。
イタコがピンチだって?
水臭せぇな。だったら俺を呼べよ。俺はボクシングで世界を獲った男だぜ。俺がいねぇと話は始まらねぇだろうが。てか、あんたよりもあたいでしょうが。全国制覇の合言葉で女性格闘家の間で伝説になったあたいがいないと締まらないわよ。
ボクシングチャンプに伝説の女性格闘家。無論、それ以外にも沢山の霊が集まる。
美味しい料理を追求して死にきれなかったコック。名画を盗み出し名画にかかっていた呪いによって殺された怪盗。勉強のしすぎで受験前に死んでしまった学生。他にも墓を荒らされて困っていたツタンカーメンさんちの隣に住んでいた男など。
とどめは、この男ッ!!
フッ。可愛らしいイタコさん、この僕をお忘れですか?
いや、誰だわさ、お前?
お忘れって知らねぇし。
フッ。まさとしですよ。
いやいや、
まさとしって誰さ? 今のこの流れでまさとしって、一体、全体、誰なんだわさ?
本当に身に覚えないし。
読者も混乱してるわさ。
フッ。IQ378という人間の限界〔ノイマン〕をも超えた天才である将棋指しですよ。究極の戦術を二人で探した仲ではないですか。忘れるなんて悲しいですね。でも僕が来たからには安心して下さい。先読みに関して誰にも負けなくなりますよ。
やっぱり誰だか全然分からないわさ。まさとしだよね?
いえ、まさとしって誰です? 僕の名はノリオですが?
アルツハイマーかッ!!
IQ378が泣くわさ。
本当は、30ちゃうの?
イタコは数多の霊を救ってきたがゆえ、まさとし〔もしくはノリオ〕を忘れてしまっている。しかし忘れられた本人ですら忘れられても仕方がないという感じだ。それだけ沢山の霊に感謝されている事は知っているし、それ以上に大恩があるからだ。
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