#02 不死鳥
汗をみてイタコがなにかに気づく。
目を開ける事すらも辛くなり立ち上がれなくもなるがココに勝機を糸口を見出す。
再び、不死鳥のように立ち上がる。
とッ。唐突にッ!
「イタコ殿ッ!?」
……この声って。
もしかして真田さんちの幸村くん?
「拙者でござる。真田幸村でござる。拙者を口寄せしてくだされ。地蔵菩薩様と拙者で、なんとか、この状況をひっくり返すでござる。いや、無駄でも現況よりは……」
約束通り、イタコの最大のピンチに駆けつけてきた真田幸村。
やっぱり……、ありがとんだわさ。
って、ちょっと待てよ。そうかッ!
と勝機の糸口が勝機へと様変わる。
イタコの顔に生気が戻ったのを見たサラリーマンの霊の顔も輝く。確かに不動明王と千手観音のコンボの前に地蔵菩薩と真田幸村のコンボでは、少々、心もとない。それでも幸村が言うよう、何もできない現況よりはマシになるのではないのかと。
「イタコッ! 真田幸村を口寄せしろ。そしたら選択肢も増える。負けるなッ!!」
とサラリーマンの霊が、ありったけの力を使い、絶叫するッ。
イタコが目をつむったまま微笑む。
「無理。すでにあたしのスタミナは尽きてる。口寄せした所でなにもできないわさ」
イタコの口から無理という言葉を聞いて、サラリーマンの霊と真田幸村が固まる。
今まで、やる前から決して無理だと自分から諦めなかったイタコが無理だと言ったのだ。つまり、そこまで追い詰められており、なにも打つ手がないと彼女の中で答えを出してしまったのかと二体の霊は絶句する。しかしながら、それは違う。
彼女はすでに勝機を見出していた。
諦めてはいない。
目は、決して死んではいないのだ。
口寄せしても無理だけど、でもね。
「ようやく、その霊が、なぜに黙して語らないのか分かったの」
と、晴夜とぶつかる原因となった黙して語らない霊を指差す。
親指で指さされ心を見透かされたように気になる語らない霊。
驚き、大きくも目を見開いている。
「で、なにを考えているのかも分かった。イタコちゃんの冴え渡るコールドリーディングが、ようやく答えを弾き出したわけさ。その答えこそ現況の打開策だわさ」
それでも無理に我慢でもしているのか決して口を開かない霊。
「ピア!」
口に溜まった血を吐き出すイタコ。
「この言葉の意味も、今、ようやく分かった。サラリーマンのおっちゃんと幸村の兄ちゃんの二人が助けに駆けつけてくれたから分かったの。そうよ。ピアなのよ」
……ピアノだと? 弾くつもりか?
地蔵菩薩が、ナチュラルにボケる。
いや、笑いを取る為にボケたわけではない。この後に及んでピアという言葉を持ち出すのが不思議になってしまい、ピアノと聞き間違えてしまったのだ。無論、それは地蔵菩薩でなくともイタコを心配するものは聞き間違えをしても仕方がない。
それだけ彼女は追い詰められており、ピアという余計な事は考えられないからだ。
「フフフ。ピアノじゃないわよ。相変わらず地蔵菩薩のガキんちょは空気読まないわさ。ピア。詳しい事は全てが終わった後に話す。今は、ただ力を貸して欲しいの」
血を吐きながらも、微笑むイタコ。
……うぬぬ。いまいち分からんが、
まあ、力を貸せと言うならば貸す。それでもスタミナは、尽きているのであろう?
「大丈夫だわさ、心配しないで。この勝負、負けられない。いや、絶対に負けない」
イタコの深い緑色の瞳に炎が灯る。
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