#05 巨大神父
「ともかく、あんたらを困らせてる、そのアホちんを、ぶん殴ってやるわさ。で、拳で語ったあとは、酒でも飲ませて、あたしの色香でメロメロな山木太郎だわさ」
いやいや、色香のいの字もないが。などと口を滑らせてしまえば鉄拳炸裂だろう。
「でさ、そのアホちんは、一体、どこにいるのさ?」
「クハハ」
イタコが悪霊の居場所を探ろうとした瞬間、同時に、厭らしい嗤い声が響き渡る。
どうやらイタコが放つ赤備えのパワーを感じて、件の悪霊の方から現れたようだ。
暗闇に在って、イタコ以外、なにも見えなかった空間に、ぽうっとオレンジ色の光りが灯る。その光は徐々に大きくなってゆき、遂には空間全体がオレンジに染まる。その中心には精悍な顔つきな頭の両サイドに角がある一人の男の姿が浮かぶ。
いや、角ではなく黒い髪が角のように立っている。
黒いローブを纏い、両胸に二つの銀色の十字架があしらってある。
両腕を軽く拡げて、なにかを抱えるよう手のひらを拡げて立つ様は神父に見える。
ただし、
陳腐なほどまでにキングサイズ。
推定、身長7m以上にも見える。
比較対象としては的確なのか少々疑問が残るが、イタコの胸は0.5cmである。
「汝も救いを求める哀れな子羊なのか? よかろう、汝に慈悲を与えてやろうぞ。クハハ。無論、我の強大なる力の一部となる事でだ。どうだ? 嬉しかろうが?」
「アホちんが。ぶっ飛ばすッ!?」
身長156cmほどのイタコが、7m超えの巨大神父に息をまく。
蝶のように舞い、蜂のように刺す、とばかり虚空へ右ストレートを数発繰り出す。
ジャブジャブと。
どうやら勝つ気が満々のようだ。彼女には赤備えがある。真田幸村も居る。それでも7m超えを倒すには心もとない。では、なぜ心が折れないのか。その理由はイタコという霊媒師特有のスキルが在るからだ。スキルとはコールドリーディング。
一般的に、コールドリーディングとは話術の一つに括られている。
内訳は外観から観察した要素と何気ない会話を交わして得た要素を組み合わせて相手の素性を言い当てる事を言う。そのコールドリーディングを更に昇華せたものを彼女は持っている。つまり、相手をつぶさに観察し、弱点を見抜く事ができるのだ。
無論、会話においての弁慶の泣き所や戦いにおいての弱みという意味での弱点だ。
「にへへん。あんたの弱点、もう見えてるよん。ぶっ飛ばすッ!?」
とイタコが笑う。
親指と人差指で作った輪っか、オッケーサインの輪の中から新緑の瞳が、のぞく。
そして、
右足で地面らしき部分を蹴り、神父の右膝まで飛び上がったかと思うと、左足で右膝を蹴り、左腰まで飛ぶ。左腰まで、たどり着くと左腰を右手で弾き、神父の左肘を目指す。左肘に着いたイタコは両手で左肘を掴み、くるっと一回転。にへへ。
そのまま慣性を利用して、大車輪からの着地を魅せる体操選手のように飛び出す。
もちろん着地を魅せるわけではなく今いる場所よりも上を目指す。
陳腐な神父の弱点はチンだわさ。
あっ、チンって言っても、ちんちんちゃうちゃう。
アポッ。
間違えた、メンゴ。アポちゃうわ、アゴだわさッ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます