第3話怪奇現象
病院に着くと外も中も真っ暗だった。
他にもそこへ行った人がいるのだろう、入り口の鍵は壊れ門は風にガタガタと揺れていた。
私たちは懐中電灯の光を頼りに「キャー、こわーい!」などとふざけながら動画が撮影されたであろう部屋へ向かった。
そして、その部屋へ着いた。
動画と同じように、部屋の中には電話があった。
私たちは自然に手を握りあっていた。
「ここ、よね?」
「うん、電話だけあるし、多分そうよ」
心臓がバクバクいっていた。
私の手が、ぎゅっと強く握られた。
私も強く握り返した。
そのとき。
電話が鳴り出した。
動画では、鳴った電話は取られなかった。
かけ直していたんだ。
じゃあ、私は。
「私、出るよ」
「え」
友人の手を引っ張って、空いている方の手を電話に伸ばす。
「やめなって!動画見たでしょ?!」
それでも、私は…
「男は度胸!女も度胸!」
がちゃ
「も、もすもす?」
電話をとった私の第一声は噛んだ。
あの動画のように。
「―」
「も、もしもし?」
「―」
「切りまーす」
がちゃ
電話の先は無音だった。本当になんにも聞こえなかった。
変な声や音が聞こえるよりも遥かにいいと思い、私はそのまま受話器を置いた。
置いた瞬間、するりと手に誰かが触れた気がしたが、気のせいだと思い込むことにした。
私は友人を見て
「ナニモキコエナカッタヨ。カエロー」
片言で言った。
内心、ものすごくビビっていたのだ。
「はは、ほらね」
友人も苦笑いをしながら返事をした。
そして、私たちは何事もなく帰路についたのである。
このとき、私は気づかなければいけなかった。
友人の手に、電話が置かれていた机の上に乗っていた万年筆が握られていたことに。
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