寒い冬の小さな愛
NOTTI
第1話:真っ白なクリスマス
2020年も終盤に近づいてきて、街中にイルミネーションが飾られている場所が増えてきて、どこかクリスマスの雰囲気が出てきた。そして、陽香にはこの時期になると今でも思い出すことがある。それは、彼女が3年前に今の旦那さんである・知基に出会った日のことだった。
今は一緒にいると心強い存在だが、当時はお互いにまだ付き合ったこともなければ異性の友達がいた訳でもない。そのため、手をつなぐことも一緒に並んで歩くときもどこかぎこちなかった。
今でこそ陽香と子供たちと一緒に手をつないで歩いても問題なくなってきたが、少し前まではこんなことは出来なかったし、彼も私も緊張しすぎて手をつないでいるというだけで言葉が出てこなくなり、お互いに目を合わせられない事もあった。
そして、家族4人で家から車で20分ほどの所にある大きなショッピングモールにお買い物に行った。実はこの時、陽香はお腹に第3子・第4子を身ごもっていたため、歩くことは難しくはなかったが、周囲からするとお腹がかなり大きいことで注目されてしまうことが多くなった。そのため、陽香はいつも家にいることが多く、めったに外出することはなかったが、安定期に入ったこともあり、最後の4人でのお出かけを楽しむことにしたのだった。
ショッピングモールはクリスマスが近いこともあり、駐車場に入るための車で道路が渋滞していた。そして、20分ほど待って駐車場に入ることができ、駐車場の警備員さんが駐車許可証に気がつき、特別駐車エリアへ案内してくれた。
ここのショッピングモールは特別な配慮が必要な方々の駐車場は屋内にあるため、雨が降ってもぬれることはない。そして、無事に空きを見つけて車を停めて店内に入るとすでにクリスマスのしらべと装飾がクリスマスの雰囲気を盛り上げていた。
少し歩いていると、いつも知基と買い物に来ていた悠花が「ママ!このピアノ可愛い!買って!」とママにおねだりをしてきた。もちろん、母親はおもちゃを買うことに対して良く思っていないため、「この前買ったでしょ?もう今月は買ってはダメ!」と言って商品を棚に戻した。
ただ、母親はどこか心中複雑だった。なぜなら、悠花にも智花にもクリスマスのプレゼントがあったため、何とか悟られないように必死だったからだ。そして、今日は食料品の買い出しと年末に着る為の服を買いに来たこともあり、余計な出費は避けたかった。
いつも買いに来る子供ブランド服のショップの前に来ると子供たちは楽しそうに服を選び始めた。実は最後に買ったときは彼女たちに選ばせるのではなく、陽香が子供たちに似合いそうな服を買って着させていただけだった。
そして、彼女たちが初めて選んだ服は悠花がいつも着ている服よりも控えめなデザインの服を選んできた。一方で、智花はいつも着ている服と同じようなデザインと姉妹で真逆のデザインの服を持ってきた。
実は母親が買ってきた服は母親の主観で選んでいたため、母親が可愛いと思っていただけで、彼女たちはそうは思っていなかったのかもしれない。ただ、彼女たちは新しいデザインの服を見る度にワクワクしていたのが記憶に新しい。
そして、彼女たちが選んだ服を買い、お腹にいる子供たちの服を売っているベビー用品店に行った。すると、悠花が「ママ~お腹にいるのって男の子?女の子?」と聞いてきた。母親は「お腹の赤ちゃんはどっちなのかはまだ分からないよ」と答えた。この時母親はなぜ彼女がそういう質問をしたのかと考えた。すると、1つ心当たりがあった。
それは、彼女が昨年陽香の実家に親戚が集まったときのことだった。当時3歳年上の姉夫婦に男の子が生まれた。しかし、彼女は妊娠したことが分かった当初から女の子が生まれてくる事を願っていたため、服も男女兼用ではなく女の子の服を買っていた。
しかし、お腹の中のエコー検査で男の子と分かってから服をどう選んだら良いのか分からなかった。実は旦那さんも長男だが、下は妹2人で、紗耶香も陽香と莉香と妹しかいない。つまり、男の子の服を一緒に選んだことがなかったのだ。
そのため、どれが似合うのか分からず、店員さんに「男の子向けで一番売れている服をください。」と言ったところすごくかっこいいロンパースが出てきたのだ。
その時、旦那さんは初めて父親が選んでくれた服のすごさを痛感したのだった。
そして、状況が変化したのが、12月24日の夕方だった。外はチラチラと雪が降っていて、街中にはカップルがホワイトクリスマスを楽しんでいるときのことだった。
陽香が「なんかお腹が張る」と知基に言った。知基はまさかと思ったが、生まれてくる子供のために奥さんと子供たちを連れて病院に向かった。ただ、子供たちはお母さんを送り届けたのち車で家に戻った。
家に着くと近くに住んでいる陽香の妹が駆けつけてくれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます