鬼
晴れ時々雨
🌙
家のことに無関心で放蕩者の弟の不在を心配してお見舞いに私を訪ねてくれた義兄に特別なお茶を振る舞う。
お義兄さん、もう心配いらないのですよ。不安の種はもう芽吹くことはないのだから。木枯らしの吹く旅路はさぞ体を冷やしたことでしょう。
湯気の立つ茶碗に口を付けながら首を傾げる義兄に微笑みを返す。
私が食べた貴方の弟の肉と骨は人の心を殺す。それとも、とうにそんなものは失くなっていたのかもしれない。
特製のお茶ですから、湯の底に沈むのは茶柱ではないですし、もう一つ秘密があるのです。その隠し味を手に入れるため、家財道具を売り払ったのは誰の知るところではありません。
義兄の頬が紅潮してきて、私はあと距離を詰めその瞳を覗くだけでいい。
どうぞ毟りとってください。
貴方は酩酊していて自己を失っており高尚な観念が有耶無耶になっても責める人はいるはずもなく、今だけ、人であることを忘れ恍惚に身を委ねても貴方のせいではないのです。
明日、目が醒めれば幻は隣で冷たくなっている。
どうなろうと知らない。
ずっとこうしたかった。
羅刹は、喰らい尽くすものです。
鬼 晴れ時々雨 @rio11ruiagent
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