第57話 選抜部隊の理由
サポート音声で知らされた後ろからの攻撃を、高度を上げて回避する。
正面から飛んできた魔法弾に、【
目まぐるしく動く目の前と周囲の状況を、最速で判断して最適解をたたき出す。
その繰り返しで、周囲の魔法少女たちはどんどんとその数を減らしていった。
「後ろはこれで終わり!」
サポート音が伝えたカードセット音を頼りに魔法を放つと、一人の魔法少女がお墓へと変わり落下していく。
落下中のお墓へと近づき、中から回復アイテムだけを抜き取ると、今度は上空から狙っている敵へ急接近。
「シュート!」
また一人お墓へと姿を変える。
次第に敵の攻撃は激しさを緩めていき、逆に私の装備は潤沢になっていった。
「あと十人ってところかな?」
ユキミのところにどれくらいいるのかわからないけど、こっちはもう少しで片付きそうだ。
すると、最前線から一歩奥へと進んだところにいた魔法少女が前へ出てきた。
今までは指揮に専念し、前へと出てこないようにしていたプレイヤー。
ユイだった。
「あなたが本気で戦うと、周りがどんどん倒されていく。懐かしいわねこの感じ」
「今度は負けてあげないよ」
「いいわ、やりましょう!」
先に飛び出したのは、当然私だ。
「ルゥ、スゥ! 私と一緒にヒナを止めるわよ!」
「了解ッス!」
「行きますよ!」
そう言って前に出てきた二人は、少し前に戦った私のプレイスタイルを真似てる二人組。
「さっきまでとは、違うんだからね!」
【
「これはさっきのお礼! 【
攻撃魔法を使った後に発生する、マナチャージ時間を短縮する魔法。
これなら、連続で【
そして、回避先へと放った攻撃は相手の一人を撃ちぬいた。
「まだ私がいるッスよ!」
私の背後からすぐに迫ってくる攻撃、でもそれはサポート音声で聞いている。
振り返りながら【
そして最後に、ユイのほうへと向かっていく。
放たれた魔法弾を回避して後ろに回ると、ステッキを背中に突き付けた。
勝負ありだ。
「私が勝ったらなんでも答えてくれるって言ったよね?」
「そうね。何が聞きたい?」
「どうして選抜チームに入ったの? ユラが周りに押されて断れずに入っちゃったって言ってたよ。でも、そんなことないでしょ?」
ユイが頼み事を断れない性格だというのは本当だ。私だって昔無理をいって色々お願いを聞いてもらったからわかる。
でも、それで進路を変えるようなことはありえない。
嫌なら嫌って断るぐらいはできるはず。だからユイにも何か、選抜チームに入りたい理由があったんだと思う。
それが気になった。
「そんなの簡単よ。あなたがどうしてだれにも相談せずに、チートに手を出したのか聞きたかったから」
「そんなことで?」
「そんなことじゃないわ。私は部活のキャプテンなのよ。あなたを止められたかもしれないし、悩みがあるのなら聞いてあげられた。あなたが転校しなくてもいいようにしてあげらるはずだった」
私のことを嫌いになっていたと思っていた。怒っていると思っていた。
なのに、そんな風に思っていてくれたなんて……。
「ごめんね、本当にごめん」
「謝ったって許さないわよ。でも、こうして今も普通にゲームをしてるってわかってよかったわ。精鋭部隊に入ったかいもあったってことね」
そういうと、ユイはこっちに振り返った。
「知ってると思うけど、このゲームには勧誘にきた元プロプレイヤ―も参加してるわ。負けたら承知しないから!」
「うん、勝ってくる!」
その言葉を最後に、ユイは魔法弾に打ち抜かれてお墓へと変わる。
「周囲に敵反応なし。状況終了です」
無機質なサポート音声を聞きながら、私はユキミのところへと向かっていった。
◆◆◆◆◆
「ユキミ!」
到着すると、戦闘はすでに終わっていた。
「全部一人で倒したの?」
「そうよ。っていうか、途中でほとんどヒナのところに行ったから、こっちはかなり楽だったの」
ユイが私を止めようと人を集めていたのかな? どうりでいくら倒しても、なかなか数が減らなかったわけだ。
「そっか……えっと、その」
いざ、面と向かうとやっぱり言い出しにくい。
とはいえ、このために復活させてもらったんだ。ここまできてなかったことにすることはできないし、なにより私がそれじゃ私を許せない!
「ごめん。ずっと自分がやったことから逃げてた。昔やったことは許されないから、もうあきらめようって。でも私が逃げてる間もユキミはずっと辛かっただろうし、みんなに迷惑かけてた。ほんとにごめん」
「もういいわよ。こうやって、またあなたと組めたんだし。それに私のほうこそ嘘ついて悪かったわね。ごめん」
最後のほうはごにょごにょと、小さくなるユキミの言葉を聞き届ける。
心の中にあったもやもやしたものが、すっと消えてなくなるような感じがした。
自分がやったことから逃げて、逃げ続けた罰は消えないかもしれないけど、でも向き合っていく。ちゃんと進んでいく!
すると、パチパチパチと乾いた拍手の音が聞こえてくる。
見るとそこには、私が倒されるきっかけになったたぬきの魔法少女がたっていた。
「君たちの事情はあまりしらないポン。だから深くは聞かないし詮索はしない。そんなことより、今は私と戦うポンよ! あの時よりも楽しめそうだし」
ユイたち部活動のメンバーはほとんど倒したはずだ。はぐれている人がいたとして、こんなに堂々と私たちの前に姿を現すことはない。
つまりこいつが、このゲームに参加しているっていう元プロプレイヤーで、スカウトにきた張本人。
まさか、こんなふざけた魔法少女だなんて思わないよね。
でも、これで一度負けた時の強さには納得いった。
次は油断しないんだから!
「ユキミ、元プロプレイヤーだから強敵だよ」
「望むところね。ひさしぶりに全力の共闘なんだから、これくらいじゃなきゃ!」
そして私たちの戦いが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます