第58話 プロとの戦い

 目の前に迫ってくる【ソード】の攻撃を、体をひねって回避する。


「反応速度も攻撃の正確性も全部さっきより上がってる。この短時間でなにがあったポン?」

「ちょっと本気だしただけだよ!」


 そして【ソード】の魔法を振るう。

 さっきよりもずっと拮抗してる。それは私の動きがよくなったからだけじゃない。

 ――ヒュン。


 離れたところから、【狙撃アーチャー】の魔法が飛んでくる。

 近距離主体の私と、それをサポートする遠距離主体のユキミ。私たちの連携がうまく機能しているからだ。


「うまく私の死角に入ろうとするし、なかなかいい連携ポンね。ねえ君たち、この試合が終わったら私のチームに入らない? 将来有望な学生は好待遇で迎え入れるポンよ!」

「残念だけど、私たちプロ志望じゃないからね!」

「まあ子供はいろいろ考えてみなよ。気が向いたらいつでも歓迎ポン!」

「子ども扱いすんな!」


 【ソード】の魔法が空を切る。なかなか一撃が入れられない。


「じゃあ、次はこっちの番ポン! 【単射シングルシュート】セット!」

「【単射シングルシュート】?」


 狭い建物の中で戦ってるならともかく、屋外の戦いで取り回しが優秀なだけの【単射シングルシュート】をセットしたのはなんでだろう?

 そんなことを考えていると、たぬきの魔法少女が距離を詰めてくる。


「さあ、避けられるかな? シュート!」


 魔法弾が飛んでくる、そう思った次の瞬間。


「――ぬわぁ!?」


 真横から飛んできた魔法弾に、撃ち抜かれていた。

 ダメージは【単射シングルシュート】が低威力なこともあって、そこまで大きくはないけど、今の攻撃どうやったんだろ?


『ユキミ、もしかしてこの人の仲間とかいたりしない?』

『いないわね。ヒナの横から突然魔法弾が飛んだように見えたわ』


 つまりどうやって攻撃したのか、わからないってことか……。

 敵は正面にいるのに、攻撃だけは別の場所から飛んでくる。


 おかしなところは、【単射シングルシュート】を使ったところだ。

 それ以外は普通に突っ込んできて攻撃をしようとしただけ。ってことは【単射シングルシュート】に何か秘密があるってことかな?


「相手の戦法を分析、打開策の模索。やっぱりいいポンねキミ。答えが出るのが先か、体力がなくなるのが先か、楽しみポン♪」


◆◆◆◆◆


「クッ……」


 今度は真上から飛んできた【単射シングルシュート】によってダメージを受けた。 ヘッドショットの判定になり、ダメージもかなりのものだ。


「残念だけど、シンキングタイムは終わりかな?」


 体力の残量は残り僅か。ユキミが援護射撃を絶えずしてくれているけど、相手は意に介さないようにすべて回避しながら、攻撃に転じてきている。


 これまででわかっていることは、どこかから飛んでくる攻撃は一発だけ。正面から突っ込んでくるたぬき魔法少女からは攻撃が来ないこと。

 そして、攻撃したあとは大きく移動していくということだった。


 サポートシステムから伝えられる音声にはおかしなところはない。

 魔法の発射音も攻撃が来る方向から聞こえている。


 これは……わかんないな。

 とはいえ、最後まであきらめない!


「じゃあいくポン!」


 そして、たぬきの魔法少女が突っ込んできた瞬間。


「ステッキを見るであります!!」


 ユラの大声が聞こえてきた。


 ステッキを見る?

 ……ッ!? そういうことか!


『ユキミ!』

『任せて!』


 短すぎるようなやり取りだけど、これで充分。

 一緒に戦ってきた長い時間が、言葉以上に伝えてくれる!


「これで終わらせるよ!」


 そして私も突っ込んだ!

 ユラちゃんが教えてくれたステッキを見ろというアドバイス。


 それはこのゲームの基本的なシステムを思い出させてくれた。



 攻撃魔法はステッキから出る。



 つまり、戦いながらステッキから手を離して、遠隔操作で攻撃をしていたんだ。

 そこまでわかれば対処法は簡単だ。

 ステッキを手放しているのなら、そのステッキを撃って軌道をそらせばいい!


「いくポンよ! シュート!」


 その言葉とほぼ同時に、ユキミの【狙撃アーチャー】が、手から離れ空中に漂うステッキを撃ちぬいた。

 あらぬ方向へと魔法弾が飛んで行き、反撃ができない相手に向かってステッキを振りぬいた。


「【散弾サプレッション】セット! シュート!」

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